鑑賞録やその他の記事

2025-01-01から1年間の記事一覧

エルンスト・ルビッチ✕ジェニファー・ジョーンズ『小間使』(1946)

書き下ろしです。 シネマヴェーラ渋谷のエルンスト・ルビッチ監督特集で、単独監督としては最後の作となる『小間使』(1946)を観る。1938年のイギリスを舞台に、貧しい娘が小間使として雇われた上流階級の家で常識外れの行動で疎まれながらも、幸せを掴んでい…

現代の戦争映画『ランド・オブ・バッド』(2024)

書き下ろしです。 ウィリアム・ユーバンク監督作『ランド・オブ・バッド』(2024)を観る。久々にハードなアメリカ製戦争映画で、手応え充分だ。 テーマはアメリカ軍特殊部隊デルタフォースの4人組による、南アジアの過激派ゲリラの巣食う島に捕らえられた諜…

オリヴィア・デ・ハヴィランドの凄み

書き下ろしです。 オリヴィア・デ・ハヴィランドといえば、最初の印象は、自分も多くのひと同様『風と共に去りぬ』(1939)のメラニーだった。主人公スカーレットの義理の姉で、献身的・良心的でありながらも自分を持った女性をみごとに演じきり、ハティ・マク…

大人の娯楽映画『国宝』(2025)

書き下ろしです。 李相日監督作『国宝』(2025)、題材的にも興味があり、周囲の映画好きの話題にもなったので、公開してすぐに観に行ったのだが。まさか二ヶ月半を経ても国内映画ランキングの上位にあるばかりか、興収100億突破がニュースになるとは、予想し…

53分の傑作『蜘蛛の国の女王』(2023)

書き下ろしです。 菊川の野心的な映画館 Stranger に、常本琢招(たくあき)監督の短編映画特集上映「ツネモト✖️4人のヒロイン」を観に行った。常本監督および上映作品については、公式サイトを参照して頂ければと思うが。今回は自分が特に心動かされた一本…

アラン・ドワン監督の西部劇~『私刑される女』(1953)『逮捕命令』(54)

Facebook の投稿をベースに再編集し、加筆したものです。 シネマヴェーラ渋谷の特集「超西部劇」で、珍しくもアラン・ドワン監督の西部劇を2本、劇場で観る機会を得た。無声映画時代の1911年にデビュー、50年代末まで(※注)アメリカ映画界で活躍した息の長…

25年ぶりの現在『少年』(2024)

書き下ろしです。 新宿のケイズシネマで旦雄二監督作品『少年』(24)を観る。この映画の特殊な完成までの道のりについては、公式サイトの下記の文章にある通りだ。 1999 年、国旗国歌法強行採決抗議デモの実景ショットにてクランクインした映画『少年』。2003…

ディランの目『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2024)

書き下ろしです。 ジェームズ・マンゴールド監督作『名もなき者/A COMPLETE UNKNOWN』(2024)を観る。 無名のボブ・ディランがフォーク界のトップ・スターとなり、ロックに突入して波乱を巻き起こすまでを描いた実録映画で、演じるのはティモシー・シャラメ。…

アネット・ウォーレンとハリウッドの影武者歌手たち

書き下ろしです。 シネマヴェーラ渋谷のダグラス・サーク監督特集で観た『誘拐魔』(1947)。ナイトクラブで歌われる "All For Love" って曲が、主人公のルシル・ボールとジョージ・サンダースの恋の駆け引きを効果的に彩っている(※注1)。 歌手役はエセルレ…