鑑賞録やその他の記事

鑑賞録-タイトルか行

芸能の真髄『キャビン・イン・ザ・スカイ』(1943)

書き下ろしです。 ヴィンセント・ミネリの公式な監督デビュー作(※注1)『キャビン・イン・ザ・スカイ』(1943)を観る。ブロードウェイのヒット・ミュージカルの映画化で、アメリカ南部を舞台に登場人物は全員黒人という趣向だ。 お人好しのリトル・ジョーは…

大人の人情喜劇『輝け星くず』(2024)

書き下ろしです。 来年公開予定の『輝け星くず』を、扇町キネマでの特別先行上映で鑑賞。監督の西尾孔志(ひろし)氏は大阪在住で、本ブログでも取り上げた大傑作『ソウル・フラワー・トレイン』(2013)をはじめとする数々の注目作をものにしてきたひと。拙作…

第一作の継承『ゴジラ-1.0』(2023)

書き下ろしです。 『ゴジラ-1.0』(2023)を観た。実写映画監督としての山崎貴を近年の『アルキメデスの大戦』(19)『ゴーストブック おばけずかん』(22)で高評価してる身としては、いやでも期待が高まる。 事前情報で戦後間もない日本をゴジラが襲うというのは…

少年とアリス-『君たちはどう生きるか』(2023)

書き下ろしです。 宮崎駿監督の最新作、『君たちはどう生きるか』(2023)を、公開初日に観る。以下ネタバレを気にせずに書くので、嫌なひとは鑑賞後にどうぞ。 異例の-鳥のイメージ画を除いて-前情報全く無しという宣伝戦略がとられたので、かなりの異色作…

オムニバス『偶然と想像』(2021)

Facebook に 2022/1/22 に投稿した記事に手を加えたものです。 濱口竜介監督作『偶然と想像』(21)。土曜午後の Bunkamura ル・シネマはびっしり満席。三話のオムニバスで場所も登場人物も限られているのに充分面白く、文化的な客層を満足させるのは、まあ、…

ほたる監督作『キスして。』(2013)

Facebook の 2013/12/13 の投稿に手を加えたものです。 自分の脚本作では気に入ってる2本の映画、『ぬるぬる燗燗』(1996)『倉沢まりや 本番羞恥心』(95)に出演された葉月螢(現・ほたる)さんの主演・監督作『キスして。』(2013)が公開中というので、観に行…

ルノワール版『小間使の日記』(1946)

Facebook の 2021/8/21 の投稿に手を加えたものです。 『小間使の日記』(46)をDVDで。オクターヴ・ミルボーの古典小説の映画化で、ルイス・ブニュエル監督のは観たが、このジャン・ルノワール版は初めて。 ブニュエル版でジャンヌ・モローが演じた主人公は…

苦すぎる西部劇『コルドラへの道』(1959)

Facebook の 2013/9/2 の投稿に手を加えたものです。 DVDでロバート・ロッセン監督の珍しい西部劇『コルドラへの道』(59)を鑑賞。いやぁ…物凄い映画だった。 1916年の米軍のパンチョ・ビリャ討伐遠征を背景に、ゲーリー・クーパー扮する少佐が戦場での活…

オリジナルの心意気『キャラクター』(2021)

2021/6/28 の Facebook 投稿に手を加えたものです。 イオンシネマ板橋で『キャラクター』(21)を観る。永井聡監督は『帝一の國』(17)は楽しめたし、何より『恋は雨上がりのように』(18)は傑作だったので、名優にして大スターの菅田将暉と再度組んだとなると観…

道化師の純情『カビリアの夜』(1957)

Facebook の2020/8/8 の投稿に手を加えたものです。 恵比寿ガーデンシネマのフェリーニ映画祭で『カビリアの夜』(57)。この監督初期のネオレアリズモ系列の中では最も有名な中の一本で自分も大好きだが、スクリーンで観るのは初めて。貧しくて酷い目に会いが…

役者がかわいい『恋は光』(2022)

Facebook の 2022/ 8/12 の投稿に手を加えたものです。公開後、また手を加えました。 褒めるひとが多いので、小林啓一監督作品『恋は光』(22)を観る。西野七瀬は評判通り素敵だし、他の役者たちも魅力的に撮られてるので、ファンやこういう話が好きな方には…

おぞましい珍品『殺しを呼ぶ卵』(1968)

書き下ろしです。 新宿シネマカリテで『殺しを呼ぶ卵』。マカロニ・ウエスタンの中でも特に残酷な『情無用のジャンゴ』(67)のジュリオ・クエスティ監督による猟奇サスペンスだ。以前 YouTube に英語版が全篇あがってる(※注1)のを発見し、冒頭を観ただけだ…

『ケイコ 目を澄ませて』(2022)

書き下ろしです。 三宅唱監督の新作『ケイコ 目を澄ませて』(22)を観る。 実在の聴覚障害の女性ボクサー小笠原恵子の著書『負けないで!』を原案に、同様の設定の "ケイコ" を映画の主人公として創出。家族やボクシング・ジムの人物たちに囲まれて、迷い苦し…

映画の青春『激怒』(2022)

Facebook に 2022/ 8/30 に投稿した記事に手を加えたものです。 『激怒』を観る。監督の高橋ヨシキと主演の川瀬陽太が森田一人とプロデューサーを務め、いま自分周辺のSNSで最も応援されてる映画。だから正直、もしダメなら困ってしまうところだが、まず何よ…

ジョン・フォード『血涙の志士』(1928)

Facebook に 2022/ 8/14 に投稿した記事に手を加えたものです。 シネマヴェーラのジョン・フォード特集、かつてフィルムセンターで観たはずの『血涙の志士』を全く覚えてないので、気になって観に行く。するとこれが驚くべきオモシロ映画で、アイルランドの…

『キューティ・ブロンド』(2001)

Facebook に 2021/ 4/16 に投稿した記事に手を加えたものです。 ロバート・ルケティック『キューティ・ブロンド』。実は初見。エリートのボンボンに「キミはボクにはふさわしくない」とフラれたブロンドのギャルが一念発起、猛勉強でハーバードの法科に入り…

『教授と美女』(1941)

Facebook に 2020/10/ 5 に投稿した記事に手を加えたものです。 ハワード・ホークス『教授と美女』をDVDで。原作・脚本がビリー・ワイルダーとチャールズ・ブラケットの名コンビ。百科事典を編纂している8人の世間知らずの教授の中にギャングの情婦が入り込…

観比べ『模倣の人生』(1934)『悲しみは空の彼方に』(59)

Facebook 内に 2022/ 8/ 7 に投稿した記事に手を加えたものです。 『模倣の人生』(ジョン・M・スタール監督)と『悲しみは空の彼方に』(ダグラス・サーク監督)を観比べる。いずれもファニー・ハーストの小説 "Imitation Of Life" の映画化で、後者はリメ…

滑稽で哀しい残酷劇-『傷だらけの挽歌』(1971)

Facebook 内に 2020/ 9/28 に投稿した記事に手を加えたものです。 ロバート・アルドリッチ『傷だらけの挽歌』を数十年ぶりにDVDで再見。ハドリー・チェイスの有名な犯罪小説「ミス・ブランディッシの蘭」の二度目の映画化(※注1)で、大金持ちの令嬢誘拐を…

異常メロドラマ-『枯葉』(1956)

Facebook 内に 2018/ 9/15 に投稿した記事に手を加えたものです。 アルドリッチ『枯葉』は異常メロドラマだった。ひとりの女性がバートと名乗る謎めいた男性と恋に落ちるがゆえにトラブルに巻き込まれ、苦悩しながらも戦いぬく様を "力強過ぎる" タッチで描…

『恋は雨上がりのように』(2018)

Facebook に 2018/ 7/ 1 に投稿した記事に手を加えたものです。 ネットの評判でふだんあまり観ないタイプの日本映画に行って良かったことは正直、あんまりないのだが。永井聡監督作品『恋は雨上がりのように』、これは相当の手応えだった。作り手が小松菜奈…

『荒野の女たち』(1966)

Facebook に 2022/ 9/11 に投稿した記事に手を加えたものです。 シネマヴェーラ渋谷のジョン・フォード特集で、『荒野の女たち』を観る。この巨匠監督の滅多に劇場にかからない遺作で、念願の初見だ。絶賛するひともいる一方、批判的な意見も多いので、どん…

『コーダ あいのうた』(2021)

Facebook に 2022/ 4/30 に投稿した記事に手を加えたものです。 シアン・ヘダー『コーダ あいのうた』。聾唖の一家で唯一健常者として育った少女が歌に目覚めて夢を目指すという、アカデミー作品賞受賞作。いかにもな良心作にはあまり食指が動く方ではないの…

『合衆国最後の日』(1977)

Facebook に 2012/11/11 に投稿した記事に手を加えたものです。 渋谷シアターNでロバート・アルドリッチ監督のポリティカル・アクションの傑作『合衆国最後の日』を観てきました。1977年の日本公開以来ですから実に35年を経ての再見ですが、何ごとも新鮮だ…

『ゴーストブック おばけずかん』(2022)

Facebook に 2022/ 7/23 に投稿した記事に手を加えたものです。 山崎貴監督作品『ゴーストブック おばけずかん』。 手を尽くし考えた末に、「気楽に楽しめる」を実現してしまった嬉しい仕事。ちょっと頼りない先生と子どもたちのチームが、奇妙な町を舞台に…

『旧支配者のキャロル』(2011)

Facebook に 2011/12/17 に投稿した記事に手を加えたものです。 試写で『旧支配者のキャロル』を観ました。これは脚本・監督の高橋洋の傑作というだけではなく、映画に興味のある大人なら誰もが観るべき凄い作品です。 内容は映画学校の生徒が、高圧的な女教…