鑑賞録やその他の記事

鑑賞録-タイトルや行

生きる場を繋ぐ『夜明けのすべて』(2024)

書き下ろしです。 三宅唱監督の新作『夜明けのすべて』(2024)を観る。 PMS(月経前症候群)を患い、月に一度自分がコントロールできなくなってしまう藤沢美紗(上白石萌音)は、仕事に大失敗して失職。病気に理解ある新たな就職先で、パニック障害を抱え…

映画どアホウ『野球どアホウ未亡人』(2023)

書き下ろしです。 某ソウルフラワー監督のオススメで、小野峻志監督作『野球どアホウ未亡人』(2023)を観る。 愛する夫を草野球練習中の事故で亡くした夏子は、夫の野球の師匠たる重野進に見込まれ、野球選手としての特訓を受けることになる。野球など気が進…

西河克己監督の充実作『四つの恋の物語』(1965)

Facebook の 2019/11/11 の投稿に手を加えたものです。 新文芸坐の芦川いづみ映画祭で二本。 井田深監督作『青春を返せ』(1963)は、この監督の中でも評価の高い一本で、かなりシリアスな力作。長門裕之演じる兄の冤罪を晴らすため、妹がそれこそ身を削って真…

増村保造のミステリ活劇『闇を横切れ』(1959)

Facebook の 2018/10/30 の投稿に手を加えたものです。 文芸坐で未見だった増村保造監督作品『闇を横切れ』。デビューの翌々年、59年の作品ながら11本目という驚異のハイペース。マッギヴァーンの作品に想を得たというミステリーで、翌年から石井輝男が『地…

山﨑樹一郎『やまぶき』(2022)

書き下ろしです。 岡山県真庭市で農業しながら映画作りをしているという山﨑樹一郎監督の『やまぶき』を観る。長編三作目というが、自分はこの監督の作はお初。これがかなり密度の濃い映画体験となった。真庭市らしき地方都市を舞台に、カン・ユンス演じる韓…

安川有果『よだかの片想い』(2021)

Facebook 内に 2022/10/19 に投稿した記事をベースに書き下ろしたものです。 『Dressing Up』(2012)も面白かった安川有果監督の久々の長編映画ということで『よだかの片想い』を観る。松井玲奈扮する顔に痣のある主人公を題材にしたルポ本を「映画化したい」…

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』を三度観る

書き下ろしです。 ふと思い立って、『郵便配達は二度ベルを鳴らす』の映画版を3ヴァージョン、観てみた。原作はジェームズ・M・ケインが1934年に発表した犯罪小説の古典で、俺も学生の頃に読んだ。田舎町の車道沿いの食堂に雇われた流れ者が店主の若妻とね…

フェリーニの初期作2本『寄席の脚光』(1950)『白い酋長』(52)

Facebook に 2021/6/1 に投稿した記事に手を加えたものです。 フェデリコ・フェリーニの初期監督作2本をDVDで。 『寄席の脚光』(1950)は監督デビュー作で初見。アルベルト・ラトゥアーダとの共同監督のため、監督作としては1/2本と数えられて『8 1/2』(1963…