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フェリーニの初期作2本『寄席の脚光』(1950)『白い酋長』(52)

Facebook に 2021/6/1 に投稿した記事に手を加えたものです。

フェデリコ・フェリーニの初期監督作2本をDVDで。

寄席の脚光』(1950)は監督デビュー作で初見。アルベルト・ラトゥアーダとの共同監督のため、監督作としては1/2本と数えられて『8 1/2』(1963)のタイトルにつながる。
旅回りの芸人一座という題材からしフェリーニらしいが、冒頭から子供が点景的に配され、酒と音楽の乱痴気騒ぎ、列車や馬車といった乗り物の印象的な使い方、列をなして歩くこと、夜の野外の寂寥感、好色な男の情けなさと、後年のフェリーニ作品につながる要素が続出する。ジュリエッタ・マシーナが重要な役で嬉しくなるが、彼女のことを全く知らないひとが観ても「あの女優さんがいちばんいい」と言いそうな好演だ。
推測だが、現場ではフェリーニが出していくアイデアを、ラトゥアーダが芝居の動線決めやカット割りなどで職人的にまとめていったのではないか。監督としてひとりだちしたフェリーニが、ロッセリーニ的な「生々しさ」より親しみやすい「うまさ」を見せるようになったのは、この出発点があったからかも知れない。
舞台の描写は芸人が暴走してしまうような場面も含め、全て気持ちよく見せる。客席の挿み方もうまい。全体としては深く胸を打ちはしなくとも、ペーソスを感じさせる好篇といえる。

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白い酋長』(52 ※注)は初の単独監督作で、以前観たときは映画館以外の上映施設(たぶんアテネ・フランセ文化センター?)で無字幕だった。
新婚旅行でローマに来たカップルの若妻が、写真を使った絵物語本のヒーロー "白い酋長" 役のスターに会いに行って、行方不明になってしまう。妻は自らも出演者に仕立て上げられて撮影に参加し、スターに口説かれる。並行して大慌ての旦那側も描かれるという趣向。原案と脚本でアントニオーニが参加しているが、基本は大衆向けのお気楽喜劇だ。
昔見た中では白い酋長の登場シーンと、"カビリア" 役のジュリエッタ・マシーナ(またしても!)と火吹き男の夜のシーンが印象に残ったが(というか、それらぐらいしか覚えてないが)、いま見てもこの2つはとてもいい。いずれも突飛で詩的な表現となっており、それこそが『寄席の脚光』よりも決定的にフェリーニ映画である所以だ。また物語絵本のロケ撮影の役者たちは、雑多でどこか非現実的な漫画味を帯びており、彼らが写真用に決めポーズのストップ、ストップ、ストップ…で撮られていくシーンは不思議な感興をよびおこす。手探りで映画を自分の夢想の世界に引き寄せていく若きフェリーニの興奮が伝わってくるのだ。
旦那がエレベーターに乗ったおばさまを追いかけていくあたりや、警察からの脱出シーンなどは、コメディ活劇としても充分に楽しめる。若妻役のブルネラ・ボーヴォがとても可愛い。

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今回の『寄席の脚光』でフェリーニの劇場用監督作品は全て観た。ただね…『』(55)ってのが、観たは観たけど、ほとんど覚えてないのだな。何となくだが、年取ってから観た方が響きそうな作品で、気になっている。

注:allcinema.netでは1951年作品とされているが、ここでは二冊の書籍、『フェリーニ』(ジルベールサラシャ著・近藤矩子訳、三一書房)『私は映画だ 夢と回想』(フェデリコ・フェリーニ著・岩本憲児訳、フィルムアート社)にそれぞれ所載のフィルモグラフィーに従い、1952年作品とした。

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寄席の脚光(字幕版)