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どのアニーがお好き?

Facebook に 2021/12/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。

ジョージ・スティーヴンス監督作品『愛の弾丸』(35)を観ました。原題はズバリ、"Annie Oakley" というわけで、ミッシーことバーバラ・スタンウィックがアニー・オークレイを演じます。
ご存知ない方のために簡単に説明すると、アニー・オークレイは実在の人物で、西部開拓時代を生きたバッファロー・ビルが自らの体験をもとに西部の世界を見世物化した「ワイルド・ウエスト・ショー」の花形となった女ガンマン。卓越した射撃の技量で伝説的な存在になりました。
演じるミッシーは当時28歳、さぞやシャキシャキした元気なアニーだろうと思いきや、意外と可憐成分多し。涙ぐむところもあって、乙女チックなアイドル映画的に楽しめます。とはいえライフルをぶっ放す姿は期待通り格好良くて、アメリカ映画のスター女優はこうでなくっちゃと唸ります。
最後のユーモラスな展開から、スパッと終わるのが痛快。こういうキレの良さって、最近の映画では見られなくなりましたね。劇中のバッファロー・ビルのショーは他の映画に比べてもリアルに思えます。

『愛の弾丸』バーバラ・スタンウィックのアニー

ところでアニー・オークレイといえば、まず有名なのはジョージ・シドニー監督作『アニーよ銃をとれ』(50)でしょう。途中降板したジュディ・ガーランドに代わって演じたベティ・ハットンは、これが代表作とされてます。
個人的な感想では、ハットンはしっかり者のアニーよりも、『モーガンズ・クリークの奇跡』(44)の常軌を逸したおバカ娘の方がハマリ役に思えるのですが、世間的な印象度ではこのひとが一番でしょう。体当たりで演じているのには痛快さがあり、「やっぱりベティこそアニー!」と言うひとがいても、おかしくないと思います。相手役はハワード・キール
なお、YouTubeで "Annie Get Your Gun Judy Garland" などで検索すると、ガーランドがアニーを演じた没テイクや歌声を見つけることもできます。

『アニーよ銃をとれ』ベティ・ハットンのアニー

この他、個人的に印象深いアニー・オークレイは、ロバート・アルトマン監督作『ビッグ・アメリカン』(76)のジェラルディン・チャップリン
今までのアニーと違ってどこかインテリっぽい女子大生みたいな雰囲気があるのですが、インディアンに寄り添う正義感の強さ、涼し気な佇まいは得難いもので、この女優さんの傑作のひとつに思えます。

『ビッグ・アメリカン』ジェラルディン・チャップリンのアニー

アニー・オークレイは、他にも登場する映画はあるようですし、私は見てないのですがテレビ・シリーズもあったようですね。そもそも西部伝説とは関係のない「ショービジネスの中での女ガンマン」という異色のキャラクターですが、自分好みのアニーを探してみるのも楽しいと思います。私はやっぱりミッシーかな。