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『暗黒街の美女』(1958)

Facebook に 2019/12/16 に投稿した記事に手を加えたものです。

ネット上で『暗黒街の美女』を拾って観る。鈴木清順がデビュー3年目の58年に、本名の清太郎から改名して初の作品。同年には秀作『影なき声』もある。
主演は水島道太郎と白木マリだが、悪役の芦田伸介に生彩あり。安部徹も出ているのだが悪役ではなく水島を慕う根は善良なチンピラで、白木の兄。
このチンピラがお宝のダイヤモンドを飲み込んだまま転落死。近藤宏が腹を割いて(グロいシーンは無い)我が物にしようとする。それを水島が暴き、さらに芦田が横取りに来るので、白木がマネキンの乳房に埋め込む。お宝が人間の肉体からマネキンへというと、こりゃ異常な話に思えるが、奇怪さもなくサッパリと見せる。
マネキン工房の出てくる犯罪映画というとキューブリックの『非情の罠』(55)(実はキューブリック作で個人的にはいちばん好き)を思い出すが、ああいう異様さは感じられない。
マネキンが二階から一階へとするすると降りていくところはトボけた面白さがあり、ちょっと歌舞伎的なカラクリ趣味の片鱗を感じさせる。サウナ風呂に閉じ込められた白木のガラス越しの苦悶なども、この監督らしい。
とはいえ演出は芝居のつけ方からカッティングから、この頃はまだまだ普通で、なおかつ巧い。死体安置所の白木の悲しみの描き方など実にきちんとしていて、それだけに直後の港で笑顔でGIの誘いに乗るのが鮮烈。
クライマックスも、最初の発砲までのもたせ方、建物の構造を活かした銃撃戦の展開など、実に見せてくれる。この見せ場をきちんと作る心意気が、後に変容して清順タッチになるのだな。

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暗黒街の美女