鑑賞録やその他の記事

『エンジェル・グラディエーター』(1973)

Facebook に 2021/ 3/23 に投稿した記事に手を加えたものです。

先頃亡くなったスティーヴ・カーヴァー(※注)の長編デビュー作で、日本では劇場未公開の『エンジェル・グラディエーター』をDVDで。初見。
古代ローマ、見世物として命をかけた剣闘をさせられる奴隷たち。主催者たる貴族はさらなる刺激を観客に提供するため、女奴隷を戦わせることを思いつく。だがそれは彼女たちの反乱の幕開けとなるのだった…。
金髪美女のマーガレット・マーコフとブラックスプロイテーションの女王パム・グリアのW主演。
もちろんパムがむちゃくちゃカッコイイし、ふんだんに芝居のしどころも与えられてるわけだが、マーガレットもかなり頑張ってる。というか役者全員にやる気を出させて、表情をしっかり捉える力が、カーヴァーはデビュー時からあったのが分かる。
設定の割に予算が少ないのは随所に感じられ、ゆえにカメラがあまり引けず、寄り寄りでの画面処理となる。フレームの中に収められるものだけの積み重ねで嘘の世界を作る低予算映画ならではの工夫が、好ましい。パムが苦悶しながら剣闘相手のとどめを刺すところや、脱走を試みる男奴隷の表情を捉えた疑似夜景など、惹きつけられる場面もある。
カーヴァー監督としては『ビッグ・バッド・ママ』(74)『超高層プロフェッショナル』(79)のような傑作ではなく、部分的にジョー・ダマトが演出しているそうだが、観て損はなかった。仕上がりのリズムの良さは編集ジョー・ダンテの力もあるのだろう。

注:1945年4月5日生、2021年1月8日没

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