鑑賞録やその他の記事

『アムステルダム』(2022)

書き下ろしです。

デヴィッド・O・ラッセル監督作『アムステルダム』をイオンシネマ板橋で。
第一次大戦の英雄である将軍の戦後の死を暗殺の疑いがあると知った元部下の医者と弁護士が、冤罪を被りながらもその真相から世界的な陰謀にまで辿り着く物語。主人公の医者にクリスチャン・ベイル、弁護士に『テネット』(2020)主演のジョン・デヴィッド・ワシントンという布陣。だが観に行った大きな動機は、彼らと行動を共にするヒロインがマーゴット・ロビーだから。
この3人以外にも、テイラー・スウィフトマイク・マイヤーズ、ゾーイ・サルタナ、ラミ・マレック、アニャ・テイラー=ジョイ、ロバート・デ・ニーロという豪華なキャスティング。自分は予告編も観ず、前知識は主演格3人だけだったから、観ながら出るわ出るわ…って感じで驚かせてもらいましたよ。
でも観ていてそんなに楽しくもないんだな。サスペンスに追われながらも会話が横道に逸れそうな感じはいわゆる「オフビート」なんだけど、そんなに面白くなく、ハッキリ言っていちいち会話が長いだけに思える。日本人だから楽しみ切れない部分も多いかも知れないが、それにしても会話の撮り方も顔のアップ(バストショットも含めてだけど)の連続だから、単調なことこの上ない。最後に決着がつくところなんか3分で済みそうな話をダラダラやってる感じで、もし尺を取るならラミ・マレックなんかもっと役者としての「しどころ」を作ってあげるべきなんだけど、そうはなってない。なんかいろいろとやり切れてないのを、ただオフビート風味の会話で埋めようとした感じで、正直、退屈だった。この監督の映画を観るのは『スリー・キングス』(1999)以来で、それもあまり感心しなかったのだが、今回ほどでもなかったように思う。
でもお目当てのマーゴットはというと、やはり素晴らしい。登場は他の二人に比べて遅いのだが、それだけに出てくるなり画面を引き締めるのが凄い。後半のコート姿になってからは更に良く、ナゾの病院で銃を暴発させて思わず後ずさる短いカットなど、「ああ、やはり活劇が似合う女優さんだなあ」と思ってしまう。
また、脇役のアニャ・テイラー=ジョイは、一種の悪役ながら中身のない軽薄な感じが逆に人形的な美しさを際立たせてしまって良い。スピーチに向かうデ・ニーロのネクタイを締めてやるところなど、実に悪くて可愛い。俺なんぞ、この二人を観るだけで、入場料分以上の満足を得てしまうのだから、ちょろいものである。