鑑賞録やその他の記事

『ビリー・ザ・キッド』(1930)

Facebook に 2020/ 1/ 9に投稿した記事に手を加えたものです。

数多くのビリー・ザ・キッドものの中で古典的な有名作、1930年版『ビリー・ザ・キッド』をDVDで。監督はキング・ヴィダーだが、自分はこのハリウッドの大巨匠の映画、『白昼の決闘』(46)『戦争と平和』(56)など少ししか観ていない。
時代的にまだ無声映画の話法を引きずっていて、トーキーとしてこなれてない分、古めかしく感じる。思うにトーキー直後のほんの短い時期、映画というメディアは少しだけテンポを見失ったのだ。無声映画の巨人グリフィスも初のトーキー『世界の英雄』(30)を、いま観ると、それ以前の傑作群より古めかしい。
とはいえ、それでも充分に見応えはあって、ビリー演じるジョニー(ジョン)・マック・ブラウンは笑顔を見せるたびにやくざ者の悲哀を感じさせて魅力的だし、籠城戦で家に放火されて次々と決死の脱出をするシーンは、なかなか強烈な見せ場になっている。その後、ビリーがひとりで立てこもる岩場のビジュアルも素晴らしい。
ラストの史実無視にはびっくり。タランティーノかよ! 
この映画でのビリーは右利き。パット・ギャレット(※注)はウォーレス・ビアリー

注:ビリー・ザ・キッドを逮捕し、キッドの脱走後は追跡して最後には射殺したことで有名な保安官。サム・ペキンパー監督の『ビリー・ザ・キッド/21才の生涯』(73)ではジェームズ・コバーンが演じて、キッド以上に主人公っぽく描かれた。