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ジョン・フォード『戦争と母性』(1933)『モホークの太鼓』(39)

Facebook に 2022/ 7/26 に投稿した記事に手を加えたものです。

シネマヴェーラジョン・フォード特集2本。いずれも初見。

戦争と母性』は、ヘンリエッタ・クロスマン扮する頑固な母親が、息子を溺愛するあまり自ら招いた悲劇と贖罪の物語。
砂利道に柵と家、向こうには畑と森という、グリフィス直系の田舎描写に陶然としてると、再度にわたる駅の別れのシーンの凄さに全身の毛が逆立つ。特に最初の方、1カット目の写真が IMDb にあるのを、見て欲しい。
写真へのリンク
これだけで「何かを待ってソワソワしてる感じ」が伝わってこないだろうか。フォードの次作『ドクター・ブル』(33)でも起用されたマリアン・ニクソンの見せ場として、文句なしの入り方だ。シーンの締め括りでは彼女のクローズアップになるのだが、言葉を失うほどの圧倒的な迫力だ。こんな別れの見せ方、こんなアップの使い方があるのか!
後半、フランス旅行になってからは、思わぬ展開に映画の自由さを思い知らされ、打ちのめされてしまう。異国の地で徐々に自由になっていくクロスマンの見事なこと! 帰国した後の締めくくりでは、犬に注目だ。

モホークの太鼓』は、ヘンリー・フォンダクローデット・コルベールという顔合わせによる独立戦争の時代を描く大河ドラマ。フォード初のカラー作品。
戦地に赴く夫フォンダを妻コルベールが追うように見送る一連は、最後の「これぞ」というロング・ショットに至るまで凄い。また、フォンダがひたすら韋駄天走りを見せるシーンには、現実離れした不思議な味わいがある。荒木飛呂彦は『スティール・ボール・ラン』のひたすら走るインディアンを描く前に、これを観ていたのだろうか。
苦労知らずのお嬢ちゃんからたくましい生活者へと成長するコルベールが魅力的。未亡人の女傑エドナ・メイ・オリヴァーがみごとなまでにフォード的人物を演じ、泣かせる。まだ若いワード・ボンドの活躍も御馳走だ。