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『続・荒野の用心棒』(1966)をスクリーンで観る

Facebook に 2020/ 2/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。

セルジオ・コルブッチ監督によるマカロニ・ウエスタンの異常傑作『続・荒野の用心棒』を、シネマート新宿に夫婦で観に行く。
映画館で観るのは初。泥土をズルズルと棺桶を引きずって歩くジャンゴ(※注1)の後ろ姿。その名が雄々しく歌い上げられる例の主題歌(※注2)が鳴り響くタイトルだけで高揚させられ、入場料分の価値がある。
タイトル後のファースト・シーンの鞭打ち、ヒロインが地面を引きずられるのを、顔のアップから素早くズームバック。これだよな。このケレン味たっぷりの通俗的語り口。ジャンゴの顔が最初に見えるのも、足もとからカメラが上がりバーンとアップ。彼の棺桶も何かというとアップ。これです、ここが大事です、さあ、見てください、お客さん!…というわけだ。
ガトリングガン(※注3)による殺戮は、非現実的すぎてほとんどシュール。永井豪とか、夢中で観て影響を受けたんだろう。敵が発砲前にフライングで倒れ始めるミスに気付けるのは、大画面ならではか。ひと通り殺したあと、逃げる敵ボスの大佐の馬を拳銃で撃つ。倒れる大佐の顔が泥だらけになり、主題歌のインストが重なる。ここはホントにいい。
品位無用のしつこさ、ギトギト感、劇画的荒々しさはパワフルというしかないが、知恵を絞って作っているから空回りにはならない。ラストの墓場の対決はテレビ放映時の記憶があったけど、今回、曲撃ちに利用する墓標にもちゃんと意味があるのに気づかされた。子供の頃にはおそらく分かってなかったのではないか。
映画館を出て新宿 TSUTAYA(※注4)へ。勢いで『情無用のジャンゴ』(66)と『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(71)を借りた。

注1:本作以降、"ジャンゴ" はマカロニ・ウエスタンの神話的な名前となり、同名の主人公が登場してタイトルに冠した映画が量産された。2012年にはマカロニではないが、クエンティン・タランティーノがウエスタン『ジャンゴ 繋がれざる者』を作り、フランコ・ネロも少しだけ出演している。またタランティーノ三池崇史監督作『スキヤキ・ウエスタン ジャンゴ』(2007)に出演しており、監督作『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』(19)の中ではセルジオ・コルブッチ監督を称えている。

注2:主題歌は英語版とイタリア語版が流れる2ヴァージョンがあり、シネマート新宿に響いたのは英語版。こちらの方が製作時通りなのだ。

注3:実は、正確にはガトリングガンではない。それっぽく見えるが、ガトリングガンのように銃身が回転していない。

注4:2020年11月15日に惜しくも閉店。映画に関しては抜群の品揃えで、新宿に出たついでに DVD か VHS(!)を借りる映画ファンは多かったと思う。