鑑賞録やその他の記事

鶴田法男監督の中国映画『戦慄のリンク』(2020)

Facebook 内に 2022/ 7/16 に投稿した記事に手を加えたものです。

昨日は新宿シネマカリテへ。カリコレ(※注1)での鶴田法男監督の中国映画『戦慄のリンク』、待望の国内初上映に駆けつける。ネット小説を巡る暗黒サスペンスを、不穏なカメラワークとツボを押さえた演出で見せる。

「ディスプレイ上の文字で小説を読んで悪夢に引き込まれる」という映像では難しい表現を、技術を駆使してやり遂げているのは、もちろんお見事だが。パソコンを開くところの真俯瞰ズームや車椅子の男が立ち去るカットのさりげない手応えは、実に映画を観てる気にさせてくれる。「さあ、怖い映画の始まりです」と言わんばかりの冒頭カットは嬉しく、廃病院、廊下、階段…と揃ったクライマックスの展開もさすが。ヒロインもいい。
舞台挨拶での監督の話によると、中国では○○の存在を否定する前提で作るべし…というホラー映画監督には最悪の縛りがあるそうだが。安心(?)して下さい、映像的には-いかにも鶴田監督調に-出まくりです。「幻覚なんだからいいでしょう」という開き直りの頼もしさ。娯楽映画の心意気。作り手(カメラを向ければ「写ってしまうこと」)、観客(映画館の暗闇で「観てしまうこと」)、それぞれの立場からの映画というメディアへの根源的な畏れと、職人的な洗練を両立させてしまう鶴田法男監督は、やはり信頼できる傑出した映画作家だ。
正式公開(※注2)も決まったということで、おめでたい。祈、大ヒット!

注1:新宿シネマカリテの映画祭「カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション」の略称。

注2:2022年12月23日より新宿シネマカリテなどで全国公開。