鑑賞録やその他の記事

清水宏『蜂の巣の子供たち』(1948)『風の中の子供』(37)

Facebook に 2021/ 4/22 に投稿した記事に手を加えたものです。

昨日は一昨日に引き続き、新文芸坐清水宏特集へ。

『蜂の巣の子供たち』は清水が面倒を見ていた浮浪児/戦災孤児たちを起用したオール・ロケの自主制作作品。ネオレアリズモ諸作が日本公開される前の冒険的な精神、原初的な映画の活力に圧倒される。ボロ着の子供らと復員兵の組み合わせがスクリーンの中で輝き、彼らが旅を続けるだけで画面が謳う。塩田や森林での労働、誰もが語りたくなるであろう子供が子供を背負っての山登りシーンなど、いいところを挙げればキリがない。まだ街全体が廃墟の広島も生々しく記録されており、カメラが石段を見上げれば、「おねえさん」と慕われる女性の姿がちらりと見え、後退りする。さりげないが天才にしか撮れないカットだ。

風の中の子供』は不幸に見舞われた家庭の幼い兄弟を描いたもので、こちらも素晴らしい。なんせタライ船で流される子供を馬に乗った医者が追っかける…なんて映画的趣向が炸裂するシーンがあるんだぜ。路地にターザンを真似た叫びが響き、日章旗を掴んだ少年は木に登って立てようとする。追う弟が必死に幹を這い上がる姿がいじらしい。ラスト近くのでんぐり返し、「お父さん!」の連呼は、みごと過ぎて打ちのめされた。小津の映画の名子役、突貫小僧(のちの青木富夫)が脇ながら非常においしい役で出てくるのも嬉しい。