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川越スカラ座ハロウィン映画祭『Z 〜ゼット〜 果てなき希望』(2014)

書き下ろしです。

川越スカラ座のハロウィン映画祭、2024年11月1日の最終日に駆けつける。

鶴田法男監督の相原コージ原作の旧作『Z 〜ゼット〜 果てなき希望』(2014)上映に、監督と特殊メイクの中田彰輝氏の和気あいあいとしたトークショー、中田氏が川越まつりのために作った山車の人形のみごとな頭部を間近で見られ、特殊メイク用の人工肌にも触れられるサービスつき! グッズ販売にサイン会もあった。

さて、映画はというと実は初見なのだが。始まってすぐ「おお、AIP!」と言いたくなる、低予算が故に手づくり感満点のパニック映像が、逆に生々しいゾンビ・ホラー。

フットワークの軽さに、ゾンビものというジャンルが実はスラプスティック・コメディに近いことを痛感させられる。
ゾンビに追い詰められてフレーム外に出てった女の子の「なにこれ?」という声が聞こえて、次の瞬間(その子が拾って動かした)チェーンソーのチュイーン!という音が聞こえてゾンビの血しぶきが飛んでくるとか、手を叩きたくなるおかしさだ。

といっても例えばポール・バーホーベンみたいに哄笑に振り切るのではなく、ときにマジな感情が爆発するシーンを誠実に演出していて、役者さんたちも大熱演。しっかり、タイトル通りの「果てなき希望」のテーマも打ち出して見せる。
この「何でもあり」な感じが、大衆的・劇画的な娯楽映画の醍醐味を感じさせる。

病院に皆が閉じ込められるシチュエーションは(警察署との違いはあれど)まるで『ジョン・カーペンターの要塞警察』(1976)だし、戦士役の女の子のいでたちは『ニューヨーク1997』(81)『エスケープ・フロム・LA』(96)の伝説的アウトロー・ヒーロー、スネーク・プリスキンを思わせる。
これについてはトークショー時に質問させてもらったが、どうせ低予算だからやりたいことやろうと意識したとのこと。こういう、いざとなると "ごっこ" に耽溺する精神は、黒沢清監督や阪元裕吾監督にも通じるところ。もちろん、ジョン・カーペンター映画ファンなら一見の価値アリなのは、言うまでもない。

そんなわけでふだん「静かな怖さ」が得意な鶴田監督としては、ある意味めずらしいぐらい "派手" なエンタテインメントだし、それを支える複数の人物描写や空間把握の巧さも味わえるのだが。
一箇所、「映画に近づこうとしてる」としか言いようのない、野心的で息詰まる長回しがある。そこではゾンビがまるで鶴田流ホラーの幽霊のように見えてしまい、しかもちゃんと怖いのだから、監督の業というのは恐ろしいものだ。

なお、今回の川越ハロウィン映画祭は「川越スカラ座閉館回避プロジェクト応援企画」と銘打たれている。これはDCP(映写機)の買い替えで苦境に立つ川越スカラ座のために鶴田監督と中田氏が企画したもの。
この埼玉県最古の魅力的に古めかしい映画館を失ってはなるまい! だから皆さん、映画祭が終わっても、引き続き、観に行って応援しようよ。

鶴田法男監督と中田彰輝氏

左から鶴田法男監督、中田彰輝氏

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果てなき希望