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現代の戦争映画『ランド・オブ・バッド』(2024)

書き下ろしです。

ウィリアム・ユーバンク監督作『ランド・オブ・バッド』(2024)を観る。久々にハードなアメリカ製戦争映画で、手応え充分だ。

テーマはアメリカ軍特殊部隊デルタフォースの4人組による、南アジアの過激派ゲリラの巣食う島に捕らえられた諜報員の侵入救出作戦。これが思わぬ展開から、4人組の中の最も若い新米兵キニー(リアム・ヘムズワース)の救出劇に転じる。
そこで活躍するのが、アメリカ本土の空軍基地からの通称 "リーパー" 大尉(ラッセル・クロウ)による通信システムを駆使した情報交換と無人爆撃機の遠隔操作だ。ここに現代の戦争映画ならではの妙味がある。

始まってすぐの4人で飛行機で島に向かうところからキニーの緊張が的確に伝わり、島にパラシュート降下する頃には観ているこちらも「いよいよだな!」と思ってしまう(ちなみに機内で今どき珍しいベタな死亡フラグがあり、「これは大変なことになるぞ」という予感はさせられる)。
そして降り立った海の夜明け前ギリギリのシルエット撮影の美しさ、密林をカメラが上からパンダウンすると4人が行軍する後ろ姿になる戦争映画らしいショットに、まんまと乗せられてしまうのだ。

それからの展開は常に距離によるサスペンスがキープされ続ける。その徹底ぶりがいい。
空軍基地と島との距離、4人が敵アジト近くに到着してからの(双眼鏡で覗く)アジトまでの距離、無人爆撃機と4人の距離…特に最後のでは、4人が敵交戦中に爆撃を要請しても撃ったミサイルが届くまで20秒なり30秒なりがかかる。そのわずかな時間が長く感じるのが、迫真さを生む。距離から時間のサスペンスになるのがみごとなのだ。
そうかと思えば孤立無援になったキニーが水場のくぼみに身を隠し、ゲリラの連れてきた犬が迫る場面などの昔ながらの「眼の前の敵との距離」のドキドキ感もいい。川の滝坪に飛び降りて見上げれば水しぶき越しにゲリラがいるショットの鮮やかさ!

当然ながらこうしたサスペンス演出と迫力たっぷりの戦闘アクションがダイナミックに両立していているところに、戦争映画ならではの興奮がある。銃声や爆音のリアルさは、なかなか凄い。ゲリラたちが発射するRPG(ロケットランチャー)の恐ろしさ!

後半は-ネタバレにならないようボカして書くが-キニーは「もうこれ助からんのでは?」という大ピンチに陥り、リーパーは兵隊の労働規約(?)の関係だかで通信/爆撃機操作係を離れてしまう。キニーはどうなるか? リーパーはいかにして戻るか?
ここで、絶体絶命のキニーとお買い物中のリーパーを長々とカットバックするのは、実はちょっと引っ張り過ぎの感じがしないでもない。
しかし、キニーの危機脱出の(脚本上の)アイデアはなかなか面白いし、リーパーも実にギリギリの一点突破で活躍を見せる。そのあたりの結末に向かってまとまっていくところは、よくできたプロのアメリカ映画の妙味だ。

それにしても、現代の戦争はテクノロジーを駆使するから現場の人的消耗や肉体的苦難は減るなんていう言い草がたまにあるけど、大嘘だと思う。いや、もう、大変ですよ。