鑑賞録やその他の記事

『ダークナイト ライジング』の奈落脱出の話など

Facebook に 2012/9/1 に投稿した記事に手を加えたものです。

こないだ横田基地でライブ撮影の仕事をした帰りに、駅までの長い夜道を歩く中、手伝ってくれた若いヤツと『ダークナイト ライジング』(2012)の話題になりまして、あの映画、好きな人は大好きみたいだけど、俺もそいつもあまり感心してなくて、やっぱり長いね、まあ、それでもいいところはちょこちょこあるんだけどさあ、とか言い合って、俺はやっぱり主人公のブルースが叩き落される奈落のシーン、あそこをもっと強く描くべきだったと言うと、そいつは、あのシーンは本当に無駄というか「なんでこんなことを延々と?」と思ったと言うので、俺はいや、あそこはもっと大事なシーンになるべきだったんだよ、ほら、あのブルースと交流を持つ整体師みたいなオッサンいるじゃん?と言うと、いやあ、あの人も唐突で!と返すので、唐突にせよ何にせよ、あの人の存在がもっとリアリティをもって描かれるべきだった、直接説明はしなくても、見る人に、あの人はあの人なりのリアルな人生があった、例えば、過去に彼も将軍の娘に恋していたのカモとか、本当は偉い人間で権力争いに負けたのカモとか、そういう感じで、「ああ、こういう人はいるな」と思わせる人物でないと!と言うと、ハァそうなんですかねえ、みたいな反応だったので、俺はさらに重ねて言いましたよ、ブルースが命がけで脱出のジャンプをするよね、あの瞬間、あの瞬間に、あのオッサンの反応をもっと強く描かなきゃダメなんだ、つまり彼は、「自分の代わりに飛んでくれた!」みたいな目でブルースを見なきゃダメなんだと言うと、ハッと目を見開いて話に乗ってきたので、ねえ、だってあのオッサン、どうせ奈落で死んでいくんだけど、あの瞬間だけは彼の人生の「救い」だったはずだ、そのことを作者たるクリストファー・ノーランは「知っている」、そういう風に描けてこそ、映画全体も大きくジャンプするんじゃないの、そういえば『魔女の宅急便』(89)、あれで主人公のキキが少年を救出に行くシーンで、街頭テレビを観ていた爺さんが「あれはわしのモップじゃ!」と叫ぶじゃない?あそこ、すごくいいでしょ?「ええ、いいですね!」そうなんだよ、あのとき宮崎駿は、あの爺さんの人生の、少なくともあの時期においては、あれが最も輝いた瞬間であることを「知ってた」んだよ、と言うと、明らかに「感動した!」という反応を見せたので、お、ちょっと俺、これはいいこと、言ったかな?と自惚れ、じゃあmixiなりFacebookなりに書こうかな、と思ったんですが、特に書く機会もないまま時間が過ぎそうで、そうなると俺、自分で言ったこと忘れちゃうから、いま、ビールを飲みながらパソコンに向かってるのを幸い、書いておくことにしましたよ。でもこういうことって、映画に、とっても大事だと思いません?