鑑賞録やその他の記事

2022-01-01から1年間の記事一覧

劇場版『スパイの妻』(2020)

Facebook の 2020/11/30 の投稿に手を加えたものです。 ようやく観た、黒沢清監督作『スパイの妻』。劇中のセリフを借りて「おみごと!」で済ませればいい気もするけど、それでは悔しいのでちょっと書く。でも「次、どうなるの」という、いや、そもそも「こ…

正しい映画『ラッシュ/プライドと友情』(2013)

Facebook の 2014/ 2/24 の投稿に手を加えたものです。 ようやく観て参りました、ロン・ハワード監督作『ラッシュ/プライドと友情』。観て、参りました。物語は実在のF1レーサーで、派手なスター・タイプのジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)と…

伊藤高志の初長編『零へ』(2021)

Facebook の 2022/ 8/22 の投稿に手を加えたものです。 イメージフォーラムで『零へ』を観る。80年代初頭に『SPACY』(81)『T HUNDER』(82)などで衝撃をもたらした実験映画作家、伊藤高志の新作で72分の初長篇だ。暴力的な映画を撮る二人の女性から、幻影に憑…

75分の秀作サスペンス『三人の狙撃者』(1954)

Facebook の 2021/12/27 の投稿に手を加えたものです。 Amazon Prime でルイス・アレン『三人の狙撃者』(54)。75分でバシッとまとまった娯楽サスペンスで、実に面白い。"Suddenly" という変わった名前の田舎町に大統領が来るという異常事態が、保安官以下数…

『ケイコ 目を澄ませて』(2022)

書き下ろしです。 三宅唱監督の新作『ケイコ 目を澄ませて』(22)を観る。 実在の聴覚障害の女性ボクサー小笠原恵子の著書『負けないで!』を原案に、同様の設定の "ケイコ" を映画の主人公として創出。家族やボクシング・ジムの人物たちに囲まれて、迷い苦し…

『南部に轟く太鼓』(1951)

Facebook に 2020/12/14 に投稿した記事に手を加えたものです。 B級映画界で名高いキング・ブラザース製作の評判のいい西部劇ということで観たのだが、これがホントに面白い。南北戦争を舞台にした戦略もの。主人公が攻撃の拠点とする山、攻撃目標の列車が…

キートン長編の初期作『荒武者キートン』(1923)

Facebook に 2019/ 5/20 に投稿した記事に手を加えたものです。 DVDで『荒武者キートン』鑑賞。初見。 バスター・キートンの役者としての最初の長編にはダグラス・フェアバンクスの代打で出た『馬鹿息子』(20)があり、自ら主導権を握ったのには短編3本で構…

傑作サスペンス小説の映画化『幻の女』(1944)

Facebook に 2019/12/24 に投稿した記事に手を加えたものです。 DVDでロバート・シオドマク監督作『幻の女』。 40年代のハリウッド製フィルム・ノワールの1本で、タイトルで分かるひともいようが、アイリッシュの有名小説の映画化だ。いわゆる冤罪サスペン…

三宅唱『Playback』(2012)讃

Facebook に 2013/ 6/16 に投稿した記事に手を加えたものです。 第22回プロフェッショナル映画大賞で新人監督賞を受賞した三宅唱の『Playback』だが、これは本当に刺激的な物凄い作品なのだ。内容は、ひとりの男が友人の結婚式で故郷に戻り、過去を振り返る…

ジェニファー・ジョーンズの出世作『聖処女』(1943)

Facebook に 2022/ 1/15 に投稿した記事に手を加えたものです。 ヘンリー・キング監督作『聖処女』。ドライヤー特集で最近リバイバル公開された『奇跡』(54)にも通じる宗教ファンタジーで、名高いルルドの泉の奇蹟を描く。19世紀なかば、フランスの片田舎に…

だから映画は怖い-清水宏『みかへりの塔』(1941)

Facebook に 2021/10/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。 清水宏監督作『みかへりの塔』(41)をDVDで。初見。問題児を預かる教育施設を賛美を込めて描く作品。現在も大阪にある修徳学院がモデルらしいが、関西弁は出てこない。その教育は精神主義的な…

山﨑樹一郎『やまぶき』(2022)

書き下ろしです。 岡山県真庭市で農業しながら映画作りをしているという山﨑樹一郎監督の『やまぶき』を観る。長編三作目というが、自分はこの監督の作はお初。これがかなり密度の濃い映画体験となった。真庭市らしき地方都市を舞台に、カン・ユンス演じる韓…

清水宏『蜂の巣の子供たち』(1948)『風の中の子供』(37)

Facebook に 2021/ 4/22 に投稿した記事に手を加えたものです。 昨日は一昨日に引き続き、新文芸坐の清水宏特集へ。 『蜂の巣の子供たち』は清水が面倒を見ていた浮浪児/戦災孤児たちを起用したオール・ロケの自主制作作品。ネオレアリズモ諸作が日本公開さ…

清水宏『花形選手』(1937)『小原庄助さん』(49)

Facebook に 2021/ 4/20 に投稿した記事に手を加えたものです。 新文芸坐の清水宏監督特集へ。 『花形選手』(37)は驚くべき自由な映画。兵学校の一泊二日の野外訓練を描いているのだが、太平洋戦争開戦4年前の田舎の描写は実に平和で楽しい。学生兵の隊列…

ミッシーの未公開作『たなざらし(Shopworn)』(1932)

Facebook に 2021/12/2 に投稿した記事に手を加えたものです。 ok.ru(※注1)で "Shopworn"(1932)というタイトルも知らなかった "ミッシー" ことバーバラ・スタンウィックの作品を発見。日本語に直訳すると、『たなざらし』ってところか。監督はニック・グ…

『女ガンマン 皆殺しのメロディ』(1971)

Facebook に 2020/ 2/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。 バート・ケネディ監督作『女ガンマン 皆殺しのメロディ』をDVDで。初見。71年のイギリス西部劇ということだが、監督・キャストとアメリカ人揃いなので、少々マカロニの影響を受けたハリウッド…

『タワーリング・インフェルノ』(1974)備忘録

Facebook に 2017/ 5/ 6 に投稿した記事に手を加えたものです。 『タワーリング・インフェルノ』はむちゃくちゃ巧い映画ではないのだが、これぐらいやってくれたらさすがに「プロの映画だな」と思える「分かりやすい巧さ」が目立つ映画だったので、備忘録的…

『ある男』(2022)

書き下ろしです。 石川慶監督作品『ある男』の評判が良いので、観に行った。平野啓一郎の小説の映画化だ。山間の町に住む理枝は愛する夫の事故死をきっかけに、"谷口大祐" という彼の名前と素性が全く他人のものだったという衝撃の事実に直面する。彼女の依…

『すずめの戸締まり』(2022)に脱帽

Facebook 内に 2022/11/22 に投稿した記事をベースにしてますが、ほぼ書き下ろしです。 新海誠監督作品『すずめの戸締まり』。自分は『君の名は。』(16)は火口のシーンなどが気恥ずかしくてどうにも苦手だったのだが、本作は評判もいいので観に行ってみた。…

映画監督とバンドリーダー

Facebook 内に 2014/ 5/27 に投稿した記事に手を加えたものです。 そもそも種類の違うモノを喩えるというのは、喩え遊びに過ぎないんだけど。だけどその遊びの中からほんの少し真実が顔を出すこともあると思うので、言わせてもらうと。多くの場合、映画監督…

鶴田法男監督の中国映画『戦慄のリンク』(2020)

Facebook 内に 2022/ 7/16 に投稿した記事に手を加えたものです。 昨日は新宿シネマカリテへ。カリコレ(※注1)での鶴田法男監督の中国映画『戦慄のリンク』、待望の国内初上映に駆けつける。ネット小説を巡る暗黒サスペンスを、不穏なカメラワークとツボを…

『ハスラー』(1961)を映画館で観る

書き下ろしです。 『ハスラー』が映画館にかかるとなれば、観ぬわけにはいくまい。テアトル・クラシックスのポール・ニューマン特集での番組だが、自分には何といってもロバート・ロッセン監督作品というのが大きい。まだ助監督だった頃の青山真治と話してい…

バーバラ・スタンウィック版『ステラ・ダラス』(1937)

Facebook に 2022/ 2/ 5 に投稿した記事に手を加えたものです。 大好きな "ミッシー" ことバーバラ・スタンウィックの代表作の一本、『ステラ・ダラス』の DVD を買った。監督はキング・ヴィダーでヘンリー・キングのサイレント映画のリメイク。キングつなが…

『続・荒野の用心棒』(1966)をスクリーンで観る

Facebook に 2020/ 2/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。 セルジオ・コルブッチ監督によるマカロニ・ウエスタンの異常傑作『続・荒野の用心棒』を、シネマート新宿に夫婦で観に行く。映画館で観るのは初。泥土をズルズルと棺桶を引きずって歩くジャン…

『天間荘の三姉妹』(2022)

Facebook に 2022/11/ 3 に投稿した記事に手を加えたものです。 『天間荘の三姉妹』を観る。いま作られることの大切さを考えたメッセージ性あふれる意欲作で、最初の長回しから「映画だぞ!」と堂々と打ち出し、砂浜に寝転ぶ真俯瞰から海と空へのメインタイ…

映画の青春『激怒』(2022)

Facebook に 2022/ 8/30 に投稿した記事に手を加えたものです。 『激怒』を観る。監督の高橋ヨシキと主演の川瀬陽太が森田一人とプロデューサーを務め、いま自分周辺のSNSで最も応援されてる映画。だから正直、もしダメなら困ってしまうところだが、まず何よ…

ジョン・フォード『血涙の志士』(1928)

Facebook に 2022/ 8/14 に投稿した記事に手を加えたものです。 シネマヴェーラのジョン・フォード特集、かつてフィルムセンターで観たはずの『血涙の志士』を全く覚えてないので、気になって観に行く。するとこれが驚くべきオモシロ映画で、アイルランドの…

ジョン・フォード『モガンボ』(1953)『最敬礼』(29)

Facebook に 2022/ 8/ 2 に投稿した記事に手を加えたものです。 シネマヴェーラのジョン・フォード特集、今日は『モガンボ』と『最敬礼』。いずれも初見。 『モガンボ』は、「腕と度胸の仕事師が、世間ずれしたタフな女といい雰囲気になるが、育ちのいい美人…

ジョン・フォード『戦争と母性』(1933)『モホークの太鼓』(39)

Facebook に 2022/ 7/26 に投稿した記事に手を加えたものです。 シネマヴェーラのジョン・フォード特集2本。いずれも初見。 『戦争と母性』は、ヘンリエッタ・クロスマン扮する頑固な母親が、息子を溺愛するあまり自ら招いた悲劇と贖罪の物語。砂利道に柵と…

ジョン・フォードおススメ10本

書き下ろしです。 本ブログのために自分の過去の Facebook を漁っていて、こんなのを見つけた。日付は2015年2月1日。 今日はジョン・フォードの誕生日なので、いま思いつく10本を挙げます。『三悪人』『長い灰色の線』『周遊する蒸気船』『アパッチ砦』『捜…