鑑賞録やその他の記事

バーバラ・スタンウィック版『ステラ・ダラス』(1937)

Facebook に 2022/ 2/ 5 に投稿した記事に手を加えたものです。

大好きな "ミッシー" ことバーバラ・スタンウィックの代表作の一本、『ステラ・ダラス』の DVD を買った。監督はキング・ヴィダーヘンリー・キングサイレント映画のリメイク。キングつながりだが、どっちも好きな監督だ。オリジナルも観たい。
貧しい工員の家庭に育ったステラが、お坊ちゃんのダラスと結婚し、様変わりした生活に浮かれて派手に遊んで、やがては別居。娘のローラは品の良いお嬢さんに育つのだが、ある日ステラは自分が彼女の母に相応しくないと思い知らされる…。
実年齢では30になったばかりのミッシーが、少女期から娘が結婚するぐらいの年齢までを演じきり、あっぱれ大女優ぶりを見せる。憧れの男を思いながら本を枕に寝る愛らしさ、わざとらしく淑やかぶる面白さ。派手好きの本性を表してからは、後年の彼女が得意とする悪女芝居を予告。若さと美貌で隠れてた下品さが老いて表面化し、滑稽になる感じなど、よくやるわってぐらいに出してみせる。娘のために本心を隠して突き放すシーンでは、ちらりと見せる悲しい表情にグッとくる。ラストは劇場ならすすり泣きが漏れるところだ。持てるものを全部さらけ出した大熱演。娘役のアン・シャーリーもいい。ジョン・フォード監督作『周遊する蒸気船』(35)と同時期だ。"泣かせる母もの" としても代表的な1本と言えよう。
ヴィダー演出は人物と人物が座り込んで会話に入っていく見せ方がうまく、『ビリー・ザ・キッド』(30)の頃に比べてもすっかりトーキーを使いこなしてる(もちろん『ビリー…』も好篇ではある)。ラストももちろんいいが、寝台車の場面が素晴らしい。
買った DVD には淀川長治さんの解説のオマケが付いてた。これがなんと、サイレント版の話しかしてない! まあ、この先生らしくて、愛せますけど。それでは皆さん、サヨナラ、サヨナラ、サヨナラ。