鑑賞録やその他の記事

2023-02-01から1ヶ月間の記事一覧

至高の傑作『ボディ・アンド・ソウル』(1947)

Facebook の 2013/9/3 の投稿に手を加えたものです。 DVD(※注1)でロバート・ロッセン監督作品『ボディ・アンド・ソウル』('47)。久しぶりに見直した。我が生涯のベスト作品の一本である。 タイトルは有名なスタンダード・ソングから。歌ならビリー・ホ…

バーホーベンの芸能魂『ベネデッタ』(2021)

書き下ろしです。 世界で最も身も蓋もない大監督、ポール・バーホーベンの新作『ベネデッタ』を、ヒューマントラストシネマ渋谷で観る。 17世紀イタリアの修道院を舞台に、幼い日には聖母マリアに、成長してキリストに近づいた(と、本人も周囲も思い込むよ…

映画『アルフィー』(1966)とバカラックの歌

書き下ろしです。 2023年2月8日、作曲家/映画音楽家のバート・バカラックが94歳で亡くなった。老衰による自然死だという。あまりにも多くの名曲を遺した天才だが、今日は本人の一番のお気に入りだった『アルフィー』について書く。 この歌、多くのひとは196…

オリジナルの心意気『キャラクター』(2021)

2021/6/28 の Facebook 投稿に手を加えたものです。 イオンシネマ板橋で『キャラクター』(21)を観る。永井聡監督は『帝一の國』(17)は楽しめたし、何より『恋は雨上がりのように』(18)は傑作だったので、名優にして大スターの菅田将暉と再度組んだとなると観…

『多十郎殉愛記』(2019)の贅沢さ

2019/5/22 の Facebook 投稿に手を加えたものです。 『多十郎殉愛記』(19)は、いま現在、観たことそのものが事件になるような映画だった。全ての瞬間に「この映画を作りたい」というスタッフ・キャストのはち切れるような想いが充満し、老将、中島貞夫監督の…

『ダーティハリー』(1971)編集のひみつ

書き下ろしです。 大風呂敷なタイトルにしちゃったけど、今回は『ダーティハリー』(71)-このドン・シーゲル監督クリント・イーストウッド主演の大傑作のごく一部分について書く。といっても、この映画を観たひとみんなが語りたくなる鉄橋(※注1)からのバ…

道化師の純情『カビリアの夜』(1957)

Facebook の2020/8/8 の投稿に手を加えたものです。 恵比寿ガーデンシネマのフェリーニ映画祭で『カビリアの夜』(57)。この監督初期のネオレアリズモ系列の中では最も有名な中の一本で自分も大好きだが、スクリーンで観るのは初めて。貧しくて酷い目に会いが…

オフュルス最後のアメリカ映画『無謀な瞬間』(1949)

Facebook の2022/6/22 の投稿に手を加えたものです。 『無謀な瞬間』(49)をDVDで。マックス・オフュルス監督の最後のアメリカ映画で、ジョーン・ベネットとジェームズ・メイスンという凄い組合せ。プロデュースは当時のベネットの夫ウォルター・ウェンジャー…

ドン・シーゲルの腕が冴える『殺人捜査線』(1958)

書き下ろしです。 菊川のミニシアター、Stranger のドン・シーゲル監督特集で『殺人捜査線』(58)を観る。 冒頭の港でのタクシー暴走の激しいアクションから、警察の捜査で、海外から帰国した一般人の荷物に麻薬入りの土産品を潜ませて回収する(つまり、一般…

雑草の良さ『リコリス・ピザ』(2021)

Facebook の 2022/7/11 の投稿に手を加えたものです。 ポール・トーマス・アンダーソン監督の新作『リコリス・ピザ』(21)。舞台は70年代のアメリカ西海岸。チョイ役の俳優ながら事業に手を出す15歳の少年実業家と、女子大生っぽさを残しながら自分の進む道に…

フリッツ・ラングの人情喜劇『真人間』(1938)

Facebook の 2021/6/26 の投稿に手を加えたものです。 『真人間』(38)をDVDで。フリッツ・ラング監督の渡米後三作目で、珍しくフランク・キャプラ的ともいえる題材の人情喜劇。篤志家の社長(ハリー・ケリー!)が元犯罪者たちを店員に雇ったデパートで…