鑑賞録やその他の記事

伊藤高志の初長編『零へ』(2021)

Facebook の 2022/ 8/22 の投稿に手を加えたものです。

イメージフォーラムで『零へ』を観る。80年代初頭に『SPACY』(81)『T HUNDER』(82)などで衝撃をもたらした実験映画作家伊藤高志の新作で72分の初長篇だ。
暴力的な映画を撮る二人の女性から、幻影に憑かれた初老の男、手首を埋め、また掘り返す女…と、狂った人物たちが不協和音を奏でる世界。
難解と言えば難解なんだろうが、しかしちゃんと映画としてワクワクさせてくれるいかがわしさがある。個人的には所々にマカロニ・ウエスタンのノリを思わせた。
ラスト近く、延々とオーバーラップする横移動は白眉。この世の向こうにあの世があるのではなく、映画があの世の世界そのものに見えれば、全てが横でつながっていくのだ。
しかし陰鬱ではない。案外、あっけらかんとしていて、自分は妙に元気づけられた。