鑑賞録やその他の記事

『南部に轟く太鼓』(1951)

Facebook に 2020/12/14 に投稿した記事に手を加えたものです。

B級映画界で名高いキング・ブラザース製作の評判のいい西部劇ということで観たのだが、これがホントに面白い。
南北戦争を舞台にした戦略もの。主人公が攻撃の拠点とする山、攻撃目標の列車が走る線路、敵に占領される邸宅の三箇所の位置関係が物語を動かす。切り立った山の頂上に登る道が迷路のような洞窟しかないというのが効いていて、この設定で戦略ゲームも作れそう。
恋・友情にからむ悲劇的要素の折り込み方もうまく、ヒロインが作戦を積極的に助けるのも見ていて気持ちの入る展開だ。欲を言えば彼女に前半で邸宅のピアノを弾いて欲しかったものだが(なぜかは観れば分かる)。ラストも「ああ、こう終わるんだな」という感慨がある。
監督のウィリアム・キャメロン・メンジースは『風と共に去りぬ』(39)『誰がために鐘は鳴る』(43)のプロダクション・デザイナーという映画美術界の大物で、本作でも兼ねている。始まってすぐ、婚約者に抱きしめられるヒロインのアップに踏み込むタイミングで、演出家としての腕の確かさを見せる。
出演者陣は知らないひとばかりだが、ヒロインのバーバラ・ペイトンは勝気なアメリカ美人の味があって良い。短い活動期間を経て、39歳で若死にしたそうな。
優れた脚本はフィリップ・ヨーダンシドニー・ハーモン。ヨーダンはキング・ブラザースの代表作の一本『犯罪王ディリンジャ』(45)のほか、数々の名監督と組んで『大砂塵』(54)『最前線』(57)『バルジ大作戦』(65)などを手掛けた名匠…と言いたいところだが、実は赤狩りで表立って活躍できない脚本家に名義貸しした作品も相当数あるらしい。
自分はDVDで観たが、無字幕で良いならYouTubeに複数のアップロードがあるので、探してみてはどうか。