Facebook 内のグループに 2020/ 9/12に投稿した記事に手を加えたものです。
レイモンド・チャンドラーのフィリップ・マーロウもの「さらば愛しき女よ」を映画化した『ブロンドの殺人者』(ひどい邦題w)を、数年前のリバイバル時に映画館で観て以来DVDで再見した。
『三つ数えろ』(46)のハンフリー・ボガート、『ロング・グッドバイ』(73)のエリオット・グールド、同じ原作を映画化した『さらば愛しき女よ』(75)のロバート・ミッチャムに比べ、ディック・パウエルのフィリップ・マーロウは冴えない感じで、ラストのラブコメ的(?)な展開も違和感があり、昔は「イマイチだなあ」だったんだけど。いま観ると意外に面白い。
原作に拘らずハリウッドのフィルム・ノワールの一篇と割り切って観られるようになったから…というのもあるけど、この「今ひとつカッコ悪いんだけど言わんでもいいことを言って他人を刺激して結局窮地に陥る」マーロウの不器用さが、妙に説得力があるというか。不機嫌そうに憮然とした表情にもリアルな人間味があるし。実際の探偵でマーロウの性格に近い人がいたとしたら、こんな感じなんじゃないかと思えてくる。ミュージカルの甘い二枚目から脱皮して影のある役もこなし、監督業でも傑作『眼下の敵』(57)をモノにしたパウエルは、やはり大したものなんだな。グールドのマーロウも二枚目半的だったけど、あっちはもっとオシャレだったからね。
マーロウが朦朧としたときの幻想シーンなどに意欲を見せる演出は、エドワード・ドミトリク。3年後の1947年には傑作『十字砲火』を撮る。
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