鑑賞録やその他の記事

ゴダール初の3D映画『さらば、愛の言葉よ』(2014)

Facebook に 2015/ 3/ 2 に投稿した記事に手を加えたものです。

さらば、愛の言葉よ』を観る。
ゴダールの3Dは空間の広がりというより、まず、目前を手で塞がれるような圧力として示される。嘘の立体化によって、「そこに在ること」の揺るぎなさが捏造されるような。そんな世界でヒロインは裸体を巨大空母のように描かれてしまい、空母に宿る魂は自分から言葉が引き剥がされる不安に苦しむんですよ。この神経に触れるような禍々しさは、まるで怪談だ。ついでに観てる俺らも右目と左眼が引き離される不安に立ち向かう。3Dでそれぞれ別に観ている映像が、乖離し、二重写しになったりする。何なら、平行に並んでいるはずの右目用・左目用のカメラの片方だけが動き出したりするんですよ。おお、不気味。そこで俺は抵抗して片眼を閉じたりするのだが、そのとき、実は片眼だけの映像も二重になってるのを発見する。そりゃそうだよね。なんちゅうひとを食ったジジイだ。不気味世界で疲弊し続ける男女をよそにさまよい続けるわんちゃんが救いと思ったときには、もうこのジジイの手の内だな。
ぜひとも3D版で観て頂きたい。

goodbyetolanguage3d.com