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あの2人にまた会える『ベイビーわるきゅーれ 2ベイビー』(2023)

ほぼ描き下ろしです。

ベイビーわるきゅーれ』第一作(21)はめちゃくちゃ気に入って、見た当日の Facebook には次のように投稿した。


阪元裕吾監督作『ベイビーわるきゅーれ』、可愛い女の子殺し屋ふたり(髙石あかり、伊澤彩織)にかかれば、アパートの巣から何から全ての場所が、映画となって呼吸する。メイド喫茶で事件が起きるシーンなど、構造的にはごく普通の四角い屋内なのに、みごとに決まる。クライマックスも迫力充分。見せます殺ります楽しませます、最後にゃ銀幕飛び出して、客のハートに住み着いちゃう。飛びっきりの生のダンス。そして俺は、ハイパヨちゃん hy4_4yh (※注1)を想った。


そしていよいよ待ちに待った第二作の登場だ。監督、主演はもちろん坂元・髙石・伊澤のゴールデン・トリオ。重要度では引けを取らないアクション監督も、前回に引き続き園村健介。
今回の話は、バイト格の若い殺し屋兄弟が、正規(?)の殺し屋の座を奪うために主人公たちを狙うというもの。架空のシステムを背景に殺し屋同士の戦いを描くという点では、『殺しの烙印』(67)的でもあるようなないような。まあでも、ガンマンでも股旅モノでも、名を上げるために同業者を狙う話はあるので、その変種と捉えたらよいか。
印象としてはまず、ゆるい。前作5倍増しのゆるさ。しかし悪いものではなく、ふわふわと心地よいゆるさで、前作で批評的にも(マイナー作品としては)興業的にも成功をおさめながらも、カッコ付きの「名作」を作ってやろうという変な気負いが見られないのがスゴイ。自分たちの作り上げたイッツ殺し屋ワールドに耽溺し、どれだけ新しい遊びを見つけられるかにのめり込んでる感じだ。そんな中で髙石・伊澤コンビはよりぐにゃぐにゃと魅力を発揮し、「これではますますハイパヨではないか」と思った。もちろんこれはただ単に両方のファンである俺の勝手な感想である(※注2)。
坂元監督の演出はますます調子を上げてきてる感があり、着ぐるみバイトをしてる2人の「中の顔」が挿入される呼吸や、尾行してきた兄弟を返り討ちにするところ(その後の俯瞰の長回しも含む)、食堂での隣同士の席での駆け引き(その後の「すいませんやっぱりお釣り」と戻ってくるのも含む)など、うまいなあ、才能あるなあと思わせる。最後の決行前にスマホで話すところなんかも、なかなかああは描けない。
園村アクション監督の肉弾戦も、最初のアパート室内の拳銃を手にくんずほぐれつから、見せる見せる。そして相変わらず斬新だ。役者たちは、主役ふたりはもちろんだが、周囲も前作以上に充実。中ではやはり第二の主役といえる丞威・濱田龍臣が、しどころたっぷりで楽しませてくれる。冒頭はずーっと彼らの映画だものね(※注3)。
しかしまあ、この「二作目になって、その映画の世界が確立した結果、スコーンとつき抜けて、一見 "行き当たりばったりにも思えるゆるさ" が支配してしまう感じ」って、他にもあったよね。『ジュラシック・パーク』(1993)からの『ロスト・ワールド』(97)、『ニューヨーク1997』(81)からの『エスケープ・フロム・L.A.』(96)などだ。どっちもそれゆえに好きな映画だが、実はあまり評価しないひともいるのは知っている。そういうひとには今回の『2ベイビー』は、合わない可能性があるかも。でも俺は、どこかに連れてってしまう映画の力って、こういったゆるい二作目にこそ、あるような気がするんだよなあ。

注1:ものすごい実力がありながら「暮らしはイマイチ」な感じが伝わるアイドルともラッパーとも言える二人組で、かわいい。第一作目を観て、なんとなく彼女たちを思い出したのは俺だけではないはずだ。公式サイト

注2:実際には、本作にはハイパヨではなく新しい学校のリーダーズが出演と歌で新たに関わっている。この人選も、これはこれでお見事である。

注3:実は彼らの出番が終わってから、あまりのゆるさに、「これ、2対2の対決と見せて、兄弟、あっさり死んじゃうのでは?」と勘ぐってしまった。そしていったんは「ああ、思った通りだ」なんて思ったりして…。