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ジャン=リュック・ゴダール『イメージの本』(2018)

Facebook に 2019/ 5/20 に投稿した記事に手を加えたものです。

ゴダール最新作『イメージの本』を観た。
彼の頭に残る古典映画からニュース、Youtubeに至る多様な映像を自身のナレーションと断片的な音を重ねながら、モンタージュし続ける音楽的な作品。映像の多くは破壊的なまでのフィルター処理がなされ、本来のイメージより悪夢的な、奇怪な様相を帯びる。ゴダールの観た映像そのものではなく、脳に焼き付いた残像が連続して切り出され続けるような印象だ。
このゴダールの脳内旅行は不吉で悲しいトーンが支配し、自分はイーストウッドバード』(1988)で主人公のチャーリー・パーカーが呟く「世界中の音が聞こえたら狂うだろうな」という言葉を思い出した。そんな中で時おり出現するあまり処理されてないナマ(?)な映像が奏でる映画本来の歓喜の調べが、胸を打つ。具体的に言えば最近キートンを見直してる俺は『将軍(大列車追跡)』(26)が出てきたときにグッと来ましたよ。ここに限らず列車に触れたパートは、抑えきれない映画への憧れが若々しく表出している。
終わって銀座の街に出ると、音と風景への感覚が少し変わっていた。やはりこういう映画による心の冒険は必要だ。

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