鑑賞録やその他の記事

バッファロー・ビルの映画その2『ビッグ・アメリカン』(1976)

Facebook の 2020/12/19 の投稿に手を加えたものです。

バッファロー・ビルの映画その1『西部の王者』(1944)からつづく)

バッファロー・ビル映画見比べ、二日目はロバート・アルトマン監督作品『ビッグ・アメリカン』(76)。ポール・ニューマン主演で、西部での生活を離れてワイルド・ウエスト・ショーの興行師兼スターになってからを描く。

アルトマン流に屈折した、そう簡単には気持ちよく見せてあげないぞ-という映画で、実際、主要人物の中で主人公がいちばん情けなかったりする。つまりこの邦題は皮肉にも思える。何なら、一座のもうひとりのスターのアニー・オークレーの方が堂々としてるぐらいだ。ジェラルディン・チャップリンもすごくノッて演じてる。
出だしの語り口は同じアルトマンの『ナッシュビル』(75)を思わせる群像劇かな-と思わせて、伝説の酋長シッティング・ブルをショーに呼んでからは、ビルとブルとの駆け引きが中心に。いや、ビルが勝手に駆け引きだと思ってるだけで、自然に振る舞うブルに振り回されているだけのようにも見えてくる。
それは、今では本物の西部の自然にはかなわない白人興行師になってしまった男の姿だ。そのくせ、中途半端に「西部の英雄」を背負っちゃってるのが、何とも煮え切らない。
ブルが白人のリーダーたる大統領に会えたときに、何ごとか直訴しようとするが、大統領は愛想よくしながらも全く聞き入れようとしない。直訴すること自体を全く受け付けないのだ。このリアルな残酷さが、アルトマン的なんだろうな。主人公にせよ大統領にせよ、アメリカの大衆が信じる理想像とかけ離れた人物として描かれる。
それにしてもポール・ニューマン、それほど西部劇俳優のイメージが濃くないのに、バッファロー・ビル以外にも、ブッチ・キャシディビリー・ザ・キッド、ロイ・ビーンと実在の西部の伝説的人物を多く演じているのは、興味深い。
なお、バッファロー・ビルが大衆に有名になった最初のきっかけは、生前に小説化されたからだが、その作家のバントラインを『西部の王者』(44)ではトマス・ミッチェル、『ビッグ・アメリカン』ではバート・ランカスターが演じていて、それぞれに儲け役としている。

同じ人物を扱っても全く対照的な二作だった。