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バッファロー・ビルの映画その1『西部の王者』(1944)

Facebook の 2020/12/19 の投稿に手を加えたものです。

西部劇ヒーローのひとり、"バッファロー・ビル" コーディを扱った映画を、2日続けてDVDで観る。

バッファロー狩りの名手で西部の事情通としてアメリカ軍のために活躍。やがて自らの経験に基づく見世物興行「ワイルド・ウエスト・ショー」で成功した人物だ。『アニーよ銃をとれ』(1950)他で有名な女ガンマンのアニー・オークレー(※注1)は、ビルのショーが生んだスターである。

まずウィリアム・ウェルマン監督作品『西部の王者』(44)は、ジョエル・マクリー主演の正調(っぽい)英雄半生記。興行師になる前の西部での活躍が中心だ。
インディアンの決起、騎兵隊との正面衝突など、迫力ある描写(※注2)で圧倒する一方、プロポーズ・シーンのいい感じにロマンチックな描写など、油の乗った演出でみごとに見せる。
基本はキーカメラを決めて要所要所でカットを割っていくグリフィス風サイレント映画的な折り目正しい撮り方なのだが、川での取っ組み合いを見えるか見えないかの曖昧さのまま長い横移動で捉えたのなど、いまも通じる新しい感覚の演出だ。
あと、ロングの使い方が素晴らしい。特に、赤子を抱えた妻に、戦闘に同行しないで、したら私たちだけで東部に行くわ、あなたとは終わりよ-と言われ、それでも騎兵隊の方へと走り出すところのロングは、目を奪われた。みごとにドラマチックな語り口だ。
後半の射撃ショーを通した妻との和解には、どこかミュージカル的な楽しさがあった。総じて気持ちよく観終えることのできるハリウッド・エンタテインメント・ウエスタンだ。
インディアンの扱いに関しては、白人俳優(アンソニー・クインリンダ・ダーネル!)が演じるなど、いまのポリコレ的には問題あるんだろうけど、44年の作品としては白人に非があることを押さえ、インディアンには同情的だったりもする。

バッファロー・ビルの映画その2『ビッグ・アメリカン』(1976)につづく)

注1:映画に出てくるアニー・オークレーについては、本ブログ記事「どのアニーがお好き?」で扱っている。

注2:ただし、一部でフリッツ・ラング監督作品『西部魂』(41)のカットを流用していたりする。低予算のB級でもない映画でこのようなことが行われていたのは、容易にDVDで比較できる現在の感覚では理解しにくい。