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ルノワール版『小間使の日記』(1946)

Facebook の 2021/8/21 の投稿に手を加えたものです。

小間使の日記』(46)をDVDで。
オクターヴ・ミルボーの古典小説の映画化で、ルイス・ブニュエル監督のは観たが、このジャン・ルノワール版は初めて。

ブニュエル版でジャンヌ・モローが演じた主人公は、ポーレット・ゴダード。この頃はチャップリンとは別れて、本作にも出演しているバージェス・メレディスと結婚していた。

このポーレットの生命力たるや燃えるようで、小間使として雇われた貴族家庭への反感と、成り上がりを目指す野心、性的な奔放さが入り混じって、オーラを放っている。30代半ばという年齢的な成熟もあるが、チャップリン映画での少女らしさと大違いだ。
貴族の坊っちゃんと今にもキスしそうに顔を寄せ合いながら、彼に結わえた髪を下ろさせるところなど、エロチックこの上ない。

演出はルノワールらしさ全開で、ある場所に人物がいると、絶妙な位置から別の人物が現れ、お笑いやサスペンスな絡みを見せたかと思えば、思いもかけぬタイミングで新たな人物が現れる-といったのが舞踏のように展開し続け、酔わせられる。そのあまりに音楽的な調子の良さに、観ていて笑いそうになるぐらいだ。

ドラマはフランシス・レデラー演じる野望の執事ジョゼフの悪行が引き金になって、後半、なかば強引に盛り上がっていく。彼もまた、貴族社会への復讐者なことがミソだ。
坊っちゃんを暴力的に叩きのめし、ヒロインを拉致するかのように馬車に乗せてムチを振るう。さあ、どうなるかというところで、物凄いモブシーン、目の覚めるクレーン移動が映画を沸点に至らせる。

こりゃ凄え。今さらながら、ルノワールに打ちのめされた。
代表作の一本と言っていいんじゃないだろうか。

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小間使の日記(字幕版)