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恒彦と美樹の『暴走パニック 大激突』(1976)

Facebook の 2020/2/2 の投稿に手を加えたものです。

ずっと見逃していた深作欣二監督『暴走パニック 大激突』(76)を、Amazon Prime で。

渡瀬恒彦演じる若き強盗は、二人組で銀行を荒らし回っていた真っ最中に頼りの相棒を亡くしてしまう。やがて最後の仕事とばかり、ひとりで銀行から金を奪って逃げるが、さまざまな立場で彼を追い回す人間たちの車が入り乱れて逃走を阻む…という内容。

実録路線で第一線の監督になってからの深作映画としては『資金源強奪』(75)に続く漫画チックな話で、正直、かなり乱暴な作りだが、何をおいても若き渡瀬恒彦がよく動くのにホレボレ。アパートの外階段を逃げるにせよ、かなり高い位置から手すり越しに飛び降りたりする。ひとりでの大銀行強盗も、「こいつなら!」と思わせられてしまう(まんまと大金をせしめたときに、外に停まった右翼の街宣車から「軍艦マーチ」が流れてくるのが、パチンコの大当たりを思わせておかしい)。
クライマックスはタイトル通り、カーチェイスというよりパニック。複数の車と車がぶつかり合う混乱をこれでもかと描き、Vシネの現場なんかでちょっとしたバイクアクションに凄く時間がかかるのを見ていた身としては、「よくぞここまで」と感嘆する。元気な頃の東映の底力だ。
んで、ドラマとしての真のチェイスは、不幸な境遇のヒロイン杉本美樹がどこまでも渡瀬に縋るのにある。軽快なアクション音楽が流れてる最中に、杉本がよろよろと渡瀬の車を追うカットになったときだけ、演歌調に変わるのがおかしい。結局渡瀬は杉本に捕まってしまうわけだが、そういう甘いところも、らしくていいんだよな。
しかし杉本美樹、不思議な魅力の女優さんだ。同じ東映不良ヌード女優でも、俺はむかしから池玲子よりこちら派。人間よりも女豹に近い。