Facebook に 2011/12/17 に投稿した記事に手を加えたものです。
試写で『旧支配者のキャロル』を観ました。
これは脚本・監督の高橋洋の傑作というだけではなく、映画に興味のある大人なら誰もが観るべき凄い作品です。
内容は映画学校の生徒が、高圧的な女教師=女優を主演に据えて作品を撮る内に、破滅的な運命を辿るというもの。教育はときに人を潰しかねないですが、潰すことを目的にしたような教育はさらに恐ろしい。そのような信じられないことが行われるのは、ここに描かれる女教師が「映画の怪物」だからです。
一瞬一瞬を切り取りつつ、それらを命なきスクリーン上の幻として、観るそばから「過去」にしてしまう「映画」というメディア。それは、暗闇で上映されるということも含めて「死の祝祭」でもあります。その巫女である女教師は、生贄を欲した。その生贄は命ある人間でなければならない。人間が生贄として教育され、映画に捧げられる過程。それがそのまま、映画になっている。
このように書くと、人によっては前衛的なメンドクサい映画と思われるかも知れませんが。御安心を。その語り口は分かりやすく、緊張感に満ちていて、見事に「面白い」のです。
ここに至って高橋洋は一皮も二皮もムケました。恐怖にとりつかれた男としての個性を残したままに。
役者も皆、大変素晴らしく、それぞれの「顔」を観るだけでも充分に金を払う価値はあるはずです。
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