鑑賞録やその他の記事

『教授と美女』(1941)

Facebook に 2020/10/ 5 に投稿した記事に手を加えたものです。

ハワード・ホークス教授と美女』をDVDで。
原作・脚本がビリー・ワイルダーチャールズ・ブラケットの名コンビ。百科事典を編纂している8人の世間知らずの教授の中にギャングの情婦が入り込んで皆を虜にしてしまう筋立てがファンタジー的で、実際、ゲーリー・クーパー以外の7人は白雪姫の小人を連想させるように作っているらしい。そこにうるさ方の家政婦や庶民代表みたいな清掃夫が出入りする感じが、ワイルダー的であり、ワイルダーを意識したときの三谷幸喜もこういう人物の使い方をよくする。
とはいえ室内を人物がワサワサ動くうちにその視覚的な演出が「全体的な物語のため」というより、ただただ「起きつつあることの面白さのため」にあるような不思議な感覚は実にホークス的だと思う。後半でクーパーと情婦が別れてから、教授たちの館にギャングが乗り込んできて、そいつらをどう撃退するかという一幕になったときなど、もうそのシーンだけで一本の映画を観てるような、「独立した面白さ」。これで非常に「大きな映画」を観ている気にさせられる。
情婦役のバーバラ・スタンウィックが絶品。『レディ・イヴ』『群衆』と同じ年で、脂の乗り切った時期だ。(今からキスするぞ!)というのを観客も気づくのに、される当人のクーパーだけが気づかないシーン、彼は背が高すぎるからとヌケヌケと踏み台にする本を重ねていく。粋で色っぽくて可愛く蓮っ葉で、なんとも言えない人間味のある絶世の美女だ。

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教授と美女(字幕版)