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高橋洋印の濃縮ジュース『ザ・ミソジニー』(2022)

Facebook に 2022/ 7/24 に投稿した記事に手を加えたものです。

"カリコレ" で高橋洋監督作品『ザ・ミソジニー』を一足早く。劇作家でもある女優が自分の夫を略奪した女優を館に呼び寄せ、おぞましい母親殺しの実録芝居の稽古を始める。すぐに芝居と現実の境界線が崩れ始め、物語は想像を絶する方向に狂い始める…というもの。撮照に美術衣装と力の入った画面に、深い演技がもたらす格調をたっぷりと見せ、ときにはダイナミックな高揚も奏でる演出で繰り広げられる、いいおとなたちが何やってんのか分からない世界! ゾクゾクしました。筋は分からなくとも、共振はできる。むしろ不可解であるがゆえに引き込まれる。この感じ、高橋洋ファンには彼の世界炸裂と言って通じようが、むしろここまで洋印の濃縮ジュースだと知らないひとにこそ飲ませたい気もする。例えば「見てはいけなかった」「知ってはいけなかった」怪奇事件がワイドショーという俗の場に晒され、ぼんやりとした記憶の沼の中で予想もしなかった-だが無意識の中で感知していた-地獄に通じてしまう。そんな話に誘われてしまいそうなひとなら、高橋洋の名を知らなくとも必見のアクロバット作だ。そして誰より高橋洋世界に暴れることを是とする共犯者、中原翔子の跳躍ぶりは手がつけられない。これが本当の東洋の魔女だ。観よ、染まれ、呆然を楽しめ。いや、狂え。

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