鑑賞録やその他の記事

安川有果『Dressing Up』(2012)

Facebook 内に 2015/ 9/ 5 に投稿した記事に手を加えたものです。

イメージフォーラムで、安川有果監督長編デビュー作品『Dressing Up』を観る。面白かった!
異邦人として田舎町にやってきた少女(四宮秀俊撮影による車が街に乗り入れる一連の優れたショットが印象的だ)。やがてそれは、災厄の使者の到着であったことが分かってくる。元凶は彼女の内なるデーモン、それが「無敵」ゆえ、より悲劇性が増すというのだから、まるで女子中学生版イーストウッド西部劇。
とはいえニッポンの「青春映画」の世界で、心の傷の問題を、親子関係や学校の環境といった要素を丁寧に外堀を埋めるように見せていくのだから。常識ある観客をおいてきぼりにしない真摯さ、誠実さは感じられる。
だが決してこの映画、マジメであることをエクスキューズにした文学的な自己中毒に陥らない。
映像と音響は生々しいまでに観客に向かって開かれ、ホラー映画的な卑俗な祝祭感に近いところにまで行こうとする。なんならヒロインは、幻想の中でレザーフェイス的な怪物にもなるのだ。
身も蓋もないほどに「映画を観るゾクゾク感」に迫ろうとする大胆さが好ましい。だからこっちも、「どうなる?次はどうなる?」と引きつけられてしまう。
結局それが「うわあ、こうなるのか!」までは行かず。破局の押し広げ方にも、決着のつけかたにも、それまでの大胆さに比して若干おとなしくなってしまった印象はあったものの。主役の祷キララと佐藤歌恋(好演!)の「顔」に賭ける勝負に出たことは、好ましく受け止めたい。
「負けちゃいられない」と思える、よい映画体験だった。支持します。

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ドレッシング・アップ