鑑賞録やその他の記事

映画の発見

Facebook に 2014/ 4/ 3 に投稿した記事に手を加えたものです。

一度でも映画を-いや、映像作品を-作った人間なら、それによって現実世界でのモノの見方が変化したことを感じる局面があると思う。極端な話、映画を見るように現実を見てしまっている瞬間が多発する。

たとえば、カーブのある坂道を見たら「ここを小さな車が緩やかなスピードで降りてきたら気持ちいいだろうな」とか。「それが自転車ならどうだろうな」とか。並木の下を歩いていたら、「この並木を仰ぎ見ている自分の主観ショットを移動で撮ったら気持ちいいだろうな」とか。あるいは、並木込みで歩いている自分(=登場人物)のロングショットを幻視したりとか。
そんな風に、映画作りを知ってしまった自分の視点で世界を捉えようとする。

それはけっこう気持ちいいことだけど、その気持ちよさに溺れてはいけないのだ。
そのような、映画的なモノの見方を自分の中にため込んでおくことは、ある程度魅力的な映画世界を構築するために必要なことなんだろうが。本当に大事なのは、その上で、さらに新たな発見をするための余地を自分の中に残しておくことなのだ。

そのための媒介として、シナリオとか役者とか実際の現場的条件とかがある。それらを制約とは思わず、発見のための材料と思うぐらいの逞しさが、映画作家には必要なのではないかと思う。
自分だけが日常的に抱えている「映画っぽい世界観」から脱出するためにもね。