鑑賞録やその他の記事

大所帯アイドルの原型-ゴールドウィン・ガールズ

Facebook に 2021/11/ 6 に投稿した記事に手を加えたものです。

先の投稿で触れた『フーピー』(1930)は、バスビー・バークレー最初の映画、二色テクニカラーなど、映画史的に重要な作品だが。「ゴールドウィン・ガールズ」の-恐らく-初登場作という点でも、注目に値する。
冒頭のカウガールの群舞からインディアン娘たちのエロチックなファッション・ショーまで、いろんな場面で画面を彩る娘たち。その名の通り、大プロデューサー、サミュエル・ゴールドウィン(MGM の "G" にあたる人物)肝いりのショーガール軍団だ。
元になったのは、ブロードウェイの興行師で舞台演出家のフローレンツ・ジーグフェルドのレビューで活躍した「ジーグフェルド・ガールズ」(※注1)。ここからはバーバラ・スタンウィックが出てきた。なお『フーピー』自体も原作はジーグフェルドの舞台で、映画版製作にも名を連ねている。主役のエディ・カンターもジーグフェルド人脈だ。
ジーグフェルド・ガールズのファンたちは、自分の贔屓-いわゆる「推し」を決め、その写真を買い求めたのだろう。集団で売れば-主役級に限らず-それぞれのファンができて、人気が人気を呼ぶ(※注2)。
このような売り方はゴールドウィン・ガールズでも狙われたのだろう。いま、IMDb の『フーピー』のスチールを見ると、本篇ではクレジットさえされてないガール単体のブロマイドのようなものが見られる。
ジーグフェルト・ガールズ同様、ゴールドウィン・ガールズも熱心に「推し」たファンの声が、その後の単体売り出しに反映したかも知れない。そうじゃなくとも、鍛えられ、女優に成長する基盤として機能したわけで、例えば前田敦子にとっての AKB 的なものであった。
というわけで、後にはルシル・ボールやヴァージニア・メイヨを生み出すゴールドウィン・ガールズは、いまの日本の大所帯アイドル・グループの祖型とも見ることもできるのだ。『フーピー』には若き日のポーレット・ゴダードベティ・グレイブルが出てるそうで、見つけるのも一興だ。

注1:ジーグフェルドはショービジネス界の巨人扱いされ、『巨星ジーグフェルド』(36)『ジーグフェルド・フォリーズ』(46)といった映画の題材となった。またジーグフェルド・ガールズを扱った『美人劇場』(41)も作られた。

注2:ニューヨーク市立博物館のサイトの記事によれば、ジーグフェルトのレビュー「ジーグフェルド・フォリーズ」終演後のアフター・ショー「ジーグフェルド・ミッドナイト・フロリック」では、ガールズの人気投票も行われたという。