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007 あれこれ~その1

FacebookTwitter への投稿に手を加え、再構成したものです。

007 映画とは何か。
答えはいろいろあろうが、自分にとっては「悪役がボンドをなかなか殺さないもんだから殺されちゃう映画」と言えるかも。
第一作『ドクター・ノオ』(1962)は捕まえたのに殺さない。第二作『ロシアより愛をこめて』(63)は計画を重視して殺さない。そして第三作『ゴールドフィンガー』(64)。これも第一作と同様、捕まえはするのだが、いちど殺すのをやめてからは、本当になかなか殺さない。あまりにも殺さないので、不条理劇にさえ思えてくる。


シン・なんちゃらって言い方で遊ぶのが流行ったが。自分はダニエル・クレイグ版 007 はシン・007 だと思う。一発目『カジノ・ロワイヤル』(2006)が原作第一作ってところも、実にそれらしい。
ゴジラも 007 もシンじゃない方が好きだな。


原作者イアン・フレミングは、ボンドに向いた役者としてケーリー・グラントを挙げたという。だが、冷酷そうで野性的なショーン・コネリーはケーリーとは全然、違うタイプ。次のジョージ・レーゼンビーは甘くて四角い顔のケーリー系。その後『ダイアモンドは永遠に』(1971)でカムバックしたコネリーを数に含めると…

ロジャー・ムーア(ケーリー系)→ティモシー・ダルトン(野性的、非ケーリー系)→ピアース・ブロスナン(ケーリー系)→ダニエル・クレイグ(爬虫類的、非ケーリー系)

…と、ひとりおきにケーリー・グラント系が来るのだ。すると次も?


それにしてもフレミングにボンドに、レイモンド・チャンドラーフィリップ・マーロウに向いていると言わしめたケーリー・グラントは凄い。
実際、ハワード・ホークス監督でケーリーをボンド役にする企画があったらしいが、いま「もしもケーリー・グラントがボンドだったら」という想像のヒントになるのは、アルフレッド・ヒッチコック監督との諸作-『汚名』(46)『泥棒成金』(55)『北北西に進路を取れ』(59)などだろう。


ルール破りな結末で物議を醸したクレイグ版の-言わばシン・007 の-最新作にして最終作の『ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2020)だが。実はこの映画、1967年にイオン・プロ以外で作られ、世界映画史的な大珍品となった方の『カジノ・ロワイヤル』と、いろいろと共通点があるのだ。
引退からの復帰、昔の女が生んだボンドの娘、ボンド以外の007の登場、そして何より最後にボンドは…。
ね? だから『ノー・タイム・トゥ・ダイ』に怒る方は、「これも珍品なんだな」と思って割り切っちゃえば?


007 で歌舞伎の仁木弾正や工藤祐経みたいに「そのへんの俳優がやっちゃいけない大物悪役」なのはブロフェルドではなくむしろル・シッフルなのだ。クレイグ版のマッツ・ミケルセンでさえ小粒の方で、最初のテレビ版ではピーター・ローレ、67年の映画版はオーソン・ウェルズだぞ!


以上、そのうち「その2」も書きますね。