鑑賞録やその他の記事

若さと熟練の共存『早春』(1970)

Facebook の 2018/1/31 の投稿に手を加えたものです。 中学生の頃「スクリーン」でヌード立て看板と泳ぐスチールを見て以来、気になっていたイエジー・スコリモフスキ監督作品『早春』(70)を、遂に恵比寿ガーデンシネマで初見。思わせぶりなイントロに「一昔…

バッファロー・ビルの映画その2『ビッグ・アメリカン』(1976)

Facebook の 2020/12/19 の投稿に手を加えたものです。 (バッファロー・ビルの映画その1『西部の王者』(1944)からつづく) バッファロー・ビル映画見比べ、二日目はロバート・アルトマン監督作品『ビッグ・アメリカン』(76)。ポール・ニューマン主演で、西…

バッファロー・ビルの映画その1『西部の王者』(1944)

Facebook の 2020/12/19 の投稿に手を加えたものです。 西部劇ヒーローのひとり、"バッファロー・ビル" コーディを扱った映画を、2日続けてDVDで観る。 バッファロー狩りの名手で西部の事情通としてアメリカ軍のために活躍。やがて自らの経験に基づく見世物…

夢の映画『類猿人ターザン』(1932)

Facebook の 2022/ 1/27 の投稿に手を加えたものです。 W・S・ヴァン・ダイク監督作『類猿人ターザン』(32)を観る。ターザンは多くの俳優に演じられてきたが、中でも名高いジョニー・ワイズミュラーによる第一作。「これぐらい押さえておかないとな」ぐらい…

役者がかわいい『恋は光』(2022)

Facebook の 2022/ 8/12 の投稿に手を加えたものです。公開後、また手を加えました。 褒めるひとが多いので、小林啓一監督作品『恋は光』(22)を観る。西野七瀬は評判通り素敵だし、他の役者たちも魅力的に撮られてるので、ファンやこういう話が好きな方には…

面白き脱力世界『にわのすなば GARDEN SANDBOX』(2022)

書き下ろしです。 ポレポレ東中野に黒川幸則監督作品『にわのすなば GARDEN SANDBOX』(22)を観に行く。錆びたシャッターが目立つ陸の孤島のような町。仕事の面接に来た女主人公は、タウン誌の女編集長に「映像作家」と決めつけられ、嫌々ながらも、旧友の男…

独自のクライマックス『ハケンアニメ!』(2022)

Facebook の 2022/ 6/ 4 の投稿に手を加えたものです。 吉野耕平監督作品『ハケンアニメ!』を観る。同名の小説を原作に、1クールのアニメを任された吉岡里帆演じる新人監督の奮闘と、彼女に関わる人間模様を-ライバル番組関係者も含めて-描いていく。な…

グレゴリー・ペックの陰鬱な西部劇『無頼の群』(1958)

Facebook の 2021/ 1/ 9 の投稿に手を加えたものです。 『無頼の群』を観る。西部劇史上の傑作『拳銃王』(50)同様、ヘンリー・キング監督がグレゴリー・ペックと組んだ西部劇だ。緊密な『拳銃王』に比べ、カラーでシネマスコープな分、ざっくりとした画面構…

東映実録路線を予告する『日本暴力団 組長』(1969)

Facebook の 2019/ 2/16 の投稿に手を加えたものです。 録画しておいた『日本暴力団 組長』を観る。初見。深作欣二監督が『仁義なき戦い』(73)で東映実録路線を開花させる4年前の69年作だが、すでに現代ヤクザの陰謀渦巻く勢力争いをリアルな暴力シーンを交…

西河克己監督の充実作『四つの恋の物語』(1965)

Facebook の 2019/11/11 の投稿に手を加えたものです。 新文芸坐の芦川いづみ映画祭で二本。 井田深監督作『青春を返せ』(1963)は、この監督の中でも評価の高い一本で、かなりシリアスな力作。長門裕之演じる兄の冤罪を晴らすため、妹がそれこそ身を削って真…

増村保造のミステリ活劇『闇を横切れ』(1959)

Facebook の 2018/10/30 の投稿に手を加えたものです。 文芸坐で未見だった増村保造監督作品『闇を横切れ』。デビューの翌々年、59年の作品ながら11本目という驚異のハイペース。マッギヴァーンの作品に想を得たというミステリーで、翌年から石井輝男が『地…

イーストウッド、還暦の大衆娯楽活劇『ルーキー』(1990)

Facebook の 2018/10/30 の投稿に手を加えたものです。 午後のロードショーで録画したクリント・イーストウッド監督作『ルーキー』、映画館のロードショー以来の再見。ベテラン刑事のクリントがタイトル通りの新米チャーリー・シーンと組んで活躍。大きな見…

『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』(1975)

Facebook の 2022/ 5/10 の投稿に手を加えたものです。 シャンタル・アケルマン映画祭で公開中の『ジャンヌ・ディエルマン ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地』を観る。デルフィーヌ・セイリグ演じる名もなき未亡人の日常とその崩壊を描き、最初の場…

007 あれこれ~その1

Facebook や Twitter への投稿に手を加え、再構成したものです。 007 映画とは何か。答えはいろいろあろうが、自分にとっては「悪役がボンドをなかなか殺さないもんだから殺されちゃう映画」と言えるかも。第一作『ドクター・ノオ』(1962)は捕まえたのに殺さ…

或日の鈴木清順演出

Facebook の 2017/ 2/23 の投稿に手を加えたものです。 実は俺、鈴木清順監督の『ピストルオペラ』(2001)に出てるんですよ。幻想シーンに登場する亡霊たちのひとり。プロデューサーの片嶋一貴によるキャスティングで、高橋洋、成田裕介監督らと共に調布の日…

おぞましい珍品『殺しを呼ぶ卵』(1968)

書き下ろしです。 新宿シネマカリテで『殺しを呼ぶ卵』。マカロニ・ウエスタンの中でも特に残酷な『情無用のジャンゴ』(67)のジュリオ・クエスティ監督による猟奇サスペンスだ。以前 YouTube に英語版が全篇あがってる(※注1)のを発見し、冒頭を観ただけだ…

青春ラブストーリー『花束みたいな恋をした』(2021)

Facebook の 2021/ 2/ 6 の投稿に手を加えたものです。 土井裕泰監督作品『花束みたいな恋をした』(※注)。オタク気質の男女が出会い、長い春を経て別れるまでを描く-と書いてもネタバレじゃないですよ、既に別れてるところから始まって数年前の出会う前に…

劇場版『スパイの妻』(2020)

Facebook の 2020/11/30 の投稿に手を加えたものです。 ようやく観た、黒沢清監督作『スパイの妻』。劇中のセリフを借りて「おみごと!」で済ませればいい気もするけど、それでは悔しいのでちょっと書く。でも「次、どうなるの」という、いや、そもそも「こ…

正しい映画『ラッシュ/プライドと友情』(2013)

Facebook の 2014/ 2/24 の投稿に手を加えたものです。 ようやく観て参りました、ロン・ハワード監督作『ラッシュ/プライドと友情』。観て、参りました。物語は実在のF1レーサーで、派手なスター・タイプのジェームズ・ハント(クリス・ヘムズワース)と…

伊藤高志の初長編『零へ』(2021)

Facebook の 2022/ 8/22 の投稿に手を加えたものです。 イメージフォーラムで『零へ』を観る。80年代初頭に『SPACY』(81)『T HUNDER』(82)などで衝撃をもたらした実験映画作家、伊藤高志の新作で72分の初長篇だ。暴力的な映画を撮る二人の女性から、幻影に憑…

75分の秀作サスペンス『三人の狙撃者』(1954)

Facebook の 2021/12/27 の投稿に手を加えたものです。 Amazon Prime でルイス・アレン『三人の狙撃者』(54)。75分でバシッとまとまった娯楽サスペンスで、実に面白い。"Suddenly" という変わった名前の田舎町に大統領が来るという異常事態が、保安官以下数…

『ケイコ 目を澄ませて』(2022)

書き下ろしです。 三宅唱監督の新作『ケイコ 目を澄ませて』(22)を観る。 実在の聴覚障害の女性ボクサー小笠原恵子の著書『負けないで!』を原案に、同様の設定の "ケイコ" を映画の主人公として創出。家族やボクシング・ジムの人物たちに囲まれて、迷い苦し…

『南部に轟く太鼓』(1951)

Facebook に 2020/12/14 に投稿した記事に手を加えたものです。 B級映画界で名高いキング・ブラザース製作の評判のいい西部劇ということで観たのだが、これがホントに面白い。南北戦争を舞台にした戦略もの。主人公が攻撃の拠点とする山、攻撃目標の列車が…

キートン長編の初期作『荒武者キートン』(1923)

Facebook に 2019/ 5/20 に投稿した記事に手を加えたものです。 DVDで『荒武者キートン』鑑賞。初見。 バスター・キートンの役者としての最初の長編にはダグラス・フェアバンクスの代打で出た『馬鹿息子』(20)があり、自ら主導権を握ったのには短編3本で構…

傑作サスペンス小説の映画化『幻の女』(1944)

Facebook に 2019/12/24 に投稿した記事に手を加えたものです。 DVDでロバート・シオドマク監督作『幻の女』。 40年代のハリウッド製フィルム・ノワールの1本で、タイトルで分かるひともいようが、アイリッシュの有名小説の映画化だ。いわゆる冤罪サスペン…

三宅唱『Playback』(2012)讃

Facebook に 2013/ 6/16 に投稿した記事に手を加えたものです。 第22回プロフェッショナル映画大賞で新人監督賞を受賞した三宅唱の『Playback』だが、これは本当に刺激的な物凄い作品なのだ。内容は、ひとりの男が友人の結婚式で故郷に戻り、過去を振り返る…

ジェニファー・ジョーンズの出世作『聖処女』(1943)

Facebook に 2022/ 1/15 に投稿した記事に手を加えたものです。 ヘンリー・キング監督作『聖処女』。ドライヤー特集で最近リバイバル公開された『奇跡』(54)にも通じる宗教ファンタジーで、名高いルルドの泉の奇蹟を描く。19世紀なかば、フランスの片田舎に…

だから映画は怖い-清水宏『みかへりの塔』(1941)

Facebook に 2021/10/ 4 に投稿した記事に手を加えたものです。 清水宏監督作『みかへりの塔』(41)をDVDで。初見。問題児を預かる教育施設を賛美を込めて描く作品。現在も大阪にある修徳学院がモデルらしいが、関西弁は出てこない。その教育は精神主義的な…

山﨑樹一郎『やまぶき』(2022)

書き下ろしです。 岡山県真庭市で農業しながら映画作りをしているという山﨑樹一郎監督の『やまぶき』を観る。長編三作目というが、自分はこの監督の作はお初。これがかなり密度の濃い映画体験となった。真庭市らしき地方都市を舞台に、カン・ユンス演じる韓…

清水宏『蜂の巣の子供たち』(1948)『風の中の子供』(37)

Facebook に 2021/ 4/22 に投稿した記事に手を加えたものです。 昨日は一昨日に引き続き、新文芸坐の清水宏特集へ。 『蜂の巣の子供たち』は清水が面倒を見ていた浮浪児/戦災孤児たちを起用したオール・ロケの自主制作作品。ネオレアリズモ諸作が日本公開さ…